なぜオリ中嶋監督は“強攻策”を選択? 奇襲でなく必然…劇的決着を呼んだ信頼関係

劇的な同点適時打を放ちナインに祝福されるオリックス・小田裕也(中央)【写真:共同通信社】

1点を追う9回無死一、二塁から小田がバスターで一塁線を破るタイムリー

■オリックス 3ー3 ロッテ(CSファイナル・12日・京セラドーム)

オリックスはロッテとの「パーソル クライマックスシリーズ パ」ファイナルステージ第3戦を3-3で引き分け、1996年以来、25年ぶりの日本シリーズ進出を決めた。1点を追う9回無死一、二塁の場面、小田裕也が初球バスターで右前適時打を放ち劇的な幕切れ。中嶋監督とナインの信頼関係から生まれた“強攻策”だった。

1点を追う9回無死一、二塁で、打席には今季主に守備固め、代走で出場した小田が入った。レギュラーシーズン打率.067。犠打でチャンスを広げることも考えられたが、指揮官のサインはバスターだった。打球は一塁線を抜け劇的な“サヨナラ引き分け”となった。

中嶋監督は「もちろん、バントの頭もあった。ただ、向こうの守備も考えて……。選手を信じて、つなぐことを頭に入れた。最高の結果」と振り返る。

ロッテの守備は一塁手が前進する完全なバントシフト。シーズン中もリーグ優勝に近づく2ランスクイズを決めるなど、様々な中嶋采配を見てきた小田に動揺はなかった。

打席に入るまでは「バントの準備していた」が、サインが出ると頭を切り替えた。ロッテの野手陣がマウンドで集まる時間を「打席入るまでに間があったので、切り替えられた。『気にするな思い切りいけ』と言われたので。日頃からああいう場面で準備はしていた」と口にする。

今季はエースの山本由伸、主砲の吉田正尚の活躍が目立ったが、試合を決める“日替わりヒーロー”はいくつも生まれた。スタメンで出場しない選手たちにも声をかけ、常に試合に向けた準備を怠らないチームを作り上げた中嶋監督の手腕が光った。

個人の成績に走る選手は誰1人いない。代走、守備要因としてチームを支え、CS突破を決める大仕事を成し遂げた小田は胸を張る。

「控えの1人として与えられた場面で与えられた仕事ができれば貢献できる。日本シリーズもしっかり準備していきたい」

京セラドームが騒然、大歓声に包まれた試合を決めるバスターは奇襲でなく必然。固定概念に捉われない中嶋オリックスが25年ぶりの日本一を奪いに行く。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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