【追う!マイ・カナガワ】幻のヘビ「シロマダラ」 三浦半島で相次ぐ目撃…なぜ?

中西さんが見つけたシロマダラ=葉山町

 「幻」のシロマダラ目撃情報が神奈川県内で相次ぐ。9月に葉山町の会社員中西健祐さん(48)が自宅で発見したと本紙が報じると、「追う! マイ・カナガワ」取材班などにも、続々と遭遇情報が寄せられた。

◆「愛着湧いた」

 「ヘビは嫌いだったんですが、シロマダラのおかげで愛着が湧きました」。最初に情報を寄せてくれた葉山町の中西さんは笑う。

 丘陵地にある中西さん宅を記者が訪ねると、室内で見つけたというシロマダラは体長40センチほどと小柄だった。目にした記者もヘビの怖いイメージが変わった。

 中西さんも観察するうちに「表情を感じるようになった」といい、「意識すればたくさんの生き物が、自宅の周りにいると気づきました」と言う。

 横須賀市の若月順子さん(52)は朝のジョギング中に道端で発見したという。会員制交流サイト(SNS)で市内の博物館のシロマダラに関する投稿を見つけて目撃の記録を集めていると知り、「何か地域の役に立てればと写真や情報を博物館に送りました」。

 2人はシロマダラとの出合いで、自然や地域への思いもより強まったようだ。

◆都市化が影響?

 本紙への情報提供は川崎市からが1件で、ほかは横須賀市が3件、葉山町が1件、三浦市が1件と三浦半島に集中している。

 「幻と呼ばれるのが不思議なくらい三浦半島での遭遇頻度は比較的高い」。横須賀市自然・人文博物館の学芸員萩原清司さん(58)が解説してくれた。

 ヘビは夜行性で捉えにくい生態から調査が難しく、不明点も多い。中でもシロマダラは「極端に人目に付きにくい」という。

 ただ、温暖な気候や餌の爬虫(はちゅう)類の多さなどから同半島では多く見られ「都市化が進み、イタチなどヘビを食べる哺乳類が減少傾向にあることも目撃の多さに関係しているのでは」。報道やSNSを通じて関心が高まっていることも考えられ、萩原さんは「こうした生物が身近な特色を知り、人々が自然に目を向ける機会になれば」とほほ笑む。

 絶滅の恐れのある生物などをまとめた県レッドデータブックにシロマダラは入っていないが、「存続基盤が脆弱(ぜいじゃく)」(兵庫県)、「生息数情報が乏しい」(京都府)とレッドデータに位置づける自治体もある。神奈川県などの担当者も「今後の研究や生息状況把握の力になるかもしれないので、博物館や行政に遭遇情報を寄せて」と話していた。

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