「東京マイスター」受賞“革の職人” この道一筋70年の男性、美しき技術とこだわり

東京都には優れたものづくりの技術を持つ人を表彰する「東京マイスター」制度があり、今年の受賞者の中には87歳という皮革の縫製職人もいます。この道およそ70年という男性の技術とこだわりを取材しました。

牛革で作られた財布やカードケース──。実は全て1枚の革で作られています。折り紙をイメージしたこの商品はファッションの本場イタリアでも高く評価されているといいます。これらを手掛けたのは、皮革縫製工・赤羽弘さん(87)です。

赤羽さんは今年の東京マイスターに選ばれました。東京マイスターは東京都が毎年、極めて優れたものづくりなどの技術を持つ都内の人を表彰するものです。今年=2021年は40人が選ばれ、87歳の赤羽さんは今回の受賞者の中で最年長です。この道70年という赤羽さんの技術を見せてもらうため、墨田区の工房を訪ねました。

赤羽さんは使う人をイメージして革を選び、裁断し、のり付けをして、ミシンをかけます。全ての工程が手作業です。赤羽さんは「革は厚いものや薄いもの、いろいろな種類があるから革によってミシンも調節する」と話します。赤羽さんが「革の世界」に足を踏み入れたのは18歳の時のことで、70年間にわたって革の縫製に携わってきました。

革縫製の職人一筋に仕事に取り組んできた赤羽さんですが、今後の制作活動には不安も感じています。赤羽さんは「賞は大変ありがたいが、この年齢でもらってもこれ以上の成長はなかなか。進歩ではなく衰えていくからそれが心配で、いま作っている現状を維持するのが精いっぱい」と語ります。しかし高齢などの理由から表彰式に出席できなかった赤羽さんの手元に記念の盾と賞状が届くと、赤羽さんは「やはりうれしい。何歳になっても終わりはない。"一生勉強”だということ。盾と賞状を励みに、もっと頑張らなくては。体に気を付けてもっと頑張ろうと思う」と喜びとますますの制作意欲を口にしました。

「一生勉強」と語った赤羽さんは表彰を胸に、気持ちを新たに制作活動を続けます。

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