先月末にオープンした長崎市恐竜(きょうりゅう)博物館(長崎市野母(のも)町)は国内3カ所目となる恐竜専門(せんもん)の博物館です。PR大使になったサイエンスコミュニケーターの恐竜くんに、恐竜の魅力(みりょく)や同館の見どころについてインタビューしました。
-サイエンスコミュニケーターとは、どんなお仕事ですか?
専門知識(ちしき)を生かして、テレビやトークショーに出演(しゅつえん)したり、全国各地で開いている恐竜展(きょうりゅうてん)をプロデュースしたりしています。ひと言で表すと、みなさんに分かりやすく伝える恐竜の専門家でしょうか。
-恐竜に興味(きょうみ)を持ったのは何歳(なんさい)の頃(ころ)ですか?
もともと生きものが大好きだったんですが、6歳の時、東京の上野にある国立科学博物館でタルボサウルス(アジアに生息したティラノサウルス科)の全身骨格(こつかく)標本を見て、ものすごい衝撃(しょうげき)を受けました。それが恐竜との最初の出合いで、今まで見たことのない大きさや姿(すがた)、形に圧倒(あつとう)されました。
-子どもの頃から今も、恐竜に魅了(みりょう)され続けている理由は?
多くの子どもが夢中(むちゅう)になるゲームやキャラクターは、誰(だれ)かによって用意された世界ですが、昆虫(こんちゅう)や宇(う)宙(ちゅう)、恐竜などは人間が関与(かんよ)することなく実在(じつざい)したものです。一つの発見でこれまでの常識(じょうしき)が変わったり、動物の体のつくりが解明(かいめい)できたりして、これからもずっとアップデートしていく。つくられた世界じゃないからこそ、追い掛(か)けたくなります。
-長崎では2014年に全長10メートルを超(こ)えるティラノサウルス科の歯の化石が日本で初めて見つかりました。世界的にも注目されているんですか?
ティラノ類の歯の特徴(とくちょう)であるバナナ形で分厚(ぶあつ)い歯はとてもインパクトが大きいですね。国内でこれまで見つかっていたものはずっと小型(こがた)のものでした。この地にこれだけ大型の肉食獣(にくしょくじゅう)をトップとする多様な生態系(せいたいけい)が広がっていたことの裏付(うらづ)けとなり、今後も他の恐竜がもっと見つかる可能性(かのうせい)が高いんです。
恐竜の化石は全国19道県で見つかっていますが、長崎の歯の化石はおよそ8100万年前のもの。長崎は化石が見つかり始めたばかりですが、とても珍(めずら)しい年代の地層(ちそう)があり、期待されています。
-他の博物館にはない、長崎の恐竜博物館の特色は何ですか?
やはり目玉はオランダのナチュラリス生物多様性(たようせい)センターからやってきたティラノサウルスの骨格レプリカ「トリックス」ですね。それも自然光で見ることができるのは貴重(きちょう)。観察するのにとてもいい環境(かんきょう)です。
そして何より、恐竜の化石が続々と見つかっている野母崎地区に建っているということに、とても意味があります。今も調査(ちょうさ)は続いていて、また新しい発見があるかもしれない。研究拠点(きょてん)にもなっていますから、すぐに展示(てんじ)に反映(はんえい)させることもでき、ライブ感があります。それを積み重ねれば、時間がたつほど輝(かがや)いていくと思います。博物館がここにあることで、自分ごととして考える子が増(ふ)えていくのではないでしょうか。
【プロフィール】 東京都出身。16歳(さい)でカナダに渡(わた)り、恐竜(きょうりゅう)の研究が盛(さか)んなアルバータ大で学ぶ。恐竜を通して科学への興味(きょうみ)関心につなぐ「きっかけづくり」をテーマに活動。イラストも得意(とくい)で、長崎市恐竜博物館の壁(かべ)に動物のイラストがある。