衆院選の当日、「繰り上げ閉鎖した投票所が増えた」のはホント?(データアナリスト・渡邉秀成)

第49回衆議院選挙が終わりました。選挙のたびに話題になるのが投票率です。
その投票率ですが過去3番目に低い投票率になりました。

図1 投票率グラフ

今回の選挙は10月19日告示、31日投票日となり、告示日から投票日までが過去にないほど短いものとなりました。
投票までの時間が短いため、海外に住む投票権を持つ人からは投票が間に合わないとの声が寄せられました。
そのためオンライン投票を求める声がSNS上に書き込まれました。

その一方、国内の有権者でも、投票券に記載されている投票時間に投票所に足を運んだが、すでに投票所が閉められていて投票することができなかった旨の書き込みがありました。

投票所が時間を切り上げて閉鎖したことについて、主にWEB上ではさまざまな意見が見られましたが、今回は、実際に投票所が繰り上げ閉鎖した割合について観察したいと思います。

今回の選挙ではこれまで以上に、投票所閉鎖時間を繰り上げて閉鎖する投票所が多かったのか?について見ていきます。

まず、そもそも投票場所の数はどのように変化しているかについてグラフ化したものが下記になります。
現在の選挙では大きく分けて期日前投票と投票日当日の投票所があります。今回の選挙では期日前投票を利用した人は選挙人名簿登録者数(小選挙区)の19.8%にあたる2057万9233人、当日投票をした人が5890万1622人です。

図2

図3

期日前投票所が増え、当日投票所が少なくなっていることがわかります。期日前投票所が駅やショッピングセンター内に設置されることで投票しやすい環境が整備されてきていますが、その一方、投票日当日の投票所数は減少しています。

選挙をするなら投票日当日と決めている人や、投票日直前までどこの投票するのかを慎重に検討する人も多くいますので、投票日当日の投票所数減少は有権者の投票権を確保するためにも、できるだけ避けたいところです。

そして投票所の繰り上げ閉鎖がどのくらいの割合であったのかについて、第46回衆院選から今回の選挙までグラフ化したものが下記になります。

図4

全体で見ると投票所を繰り上げ閉鎖した投票所の割合は第46回から約35%前後で推移していますが、都道府県別に見ると繰り上げ閉鎖している投票所の割合が大きく異なることがわかります。

繰り上げ閉鎖した投票所の割合が多いのは、岩手県、秋田県、福島県、和歌山県、島根県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県で、大都市圏の都道府県ではその割合が低いことがわかります。そして、前回48回衆院選と今回と比較し、繰り上げ閉鎖する投票所の割合が急激に増えたと思えるのは茨城県、栃木県です。

都道府県の投票率比較で常にトップ近辺にある島根県ですが、投票所を繰り上げ閉鎖する割合も多いことがわかります。
 
今回の選挙でSNS上で多くの人の目に触れた投票所の閉鎖時刻の繰り上げについての問題ですが、投票券に記載されている投票時間より投票時間が短くなるのであれば、選挙権は国民に憲法上国民に保障された権利*2であるので、有権者に対して事前に入念な周知活動となぜ投票所の繰り上げをする丁寧な説明が必要になるものと思います。
詳細な説明がないと有権者にさまざまな事柄を想像させることになってしまいます。
*2(第三章 国民の権利及び義務 第15条) [https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=321CONSTITUTION](https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=321CONSTITUTION)

たしかに期日前投票場所が増え、投票しやすい環境が整っているので、経費等節減のために投票所を繰り上げて閉鎖してもいいのではないかという意見もありますが、大半の有権者は投票日当日に投票をしています。
有権者の投票権を保障するためにも投票所は投票券に記載されている時間は必ず開けておく必要があるものと思います。

まとめると、全体の当日投票所で閉鎖時刻を繰り上げする割合は35%前後、都道府県により投票所を繰り上げ閉鎖する割合も異なるが、大都市圏ではその割合は少ないことがわかりました。

繰り返しになりますが投票時間の繰り上げ閉鎖については各選挙管理委員会のホームページのみならず、地域自治体の放送等、有権者に対して事前に入念な周知活動、理由説明が必要だと思います。

今回は衆議院選挙投票所の繰り上げ閉鎖する投票所の割合について見てきました。

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