【エリザベス女王杯/穴馬アナライズ-前編】ラヴズもクロノも3歳時は完敗……カギを握る3歳馬の“取捨”

今年で第46回を迎えるエリザベス女王杯(GI、芝2200m)は、例年どおり「3歳馬 vs. 古馬」がテーマとなる。

近年、3歳牝馬のトップクラスはジャパンCに向かう傾向にあり、牝馬三冠のアーモンドアイとデアリングタクトはエリザベス女王杯に不出走。それもあってか、過去10年の当レースで3歳馬は【2-4-2-32】と2勝にとどまり、【6-3-7-45】の4歳馬に圧倒されている。

しかし今年は秋華賞馬アカイトリノムスメが参戦する。牝馬限定GIで5冠の母アパパネが唯一掴めなかった栄冠を、その仔が手に入れることができるのか。同馬の評価がレース攻略のカギとなる。

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■層が厚い現3歳世代の牝馬

まずは現3歳世代のレベルを分析する。過去5年における3歳馬のエリザベス女王杯前週までの成績から、芝1800m以上、3勝クラス以上の条件で着別度数を比較したデータは以下のとおり。

▼3歳馬の古馬混合レース成績

21年 全体【8-1-2-9】/牝馬【5-0-2-2】
20年 全体【5-3-1-12】/牝馬【1-0-1-2】
19年 全体【2-0-2-17】/牝馬【0-0-0-2】
18年 全体【4-4-2-10】/牝馬【0-1-0-2】
17年 全体【4-0-4-15】/牝馬【1-0-1-4】

3歳馬は例年1勝が限界だったが、今年はじつに5勝をマーク。札幌記念で後にBCフィリー&メアターフを制したラヴズオンリーユーをソダシが下したほか、アイコンテーラー、ジェラルディーナ、アナザーリリックが3勝クラスを勝ち上がり、マリアエレーナは古馬混合のオープン特別を制した。

天皇賞・秋制覇のエフフォーリア、毎日王冠1着のシュネルマイスターをはじめ、牡馬のレベルの高さもさることながら、今年の3歳世代は牝馬も層が厚いと言い切れる成績だ。

■それでも3歳馬不振の歴史

現3歳世代がハイレベルであることは間違いない。ただ、昨年はウインマリリンの4着が3歳馬の最高着順。2019年にはオークス馬ラヴズオンリーユーが3着、秋華賞馬クロノジェネシスが5着。2017年には本格化前とはいえリスグラシューが8着と、後に歴史的名牝クラスの活躍を見せることになる牝馬でさえ、3歳時は古馬の壁に跳ね返された。

2017年はオークス2着、秋華賞3着の3歳馬モズカッチャンが制したが、この年は2200m初経験のヴィブロス(5着)が1番人気、GI未勝利のルージュバック(9着)が2番人気と、不安要素を抱える古馬が上位人気を形成していた。オークスと秋華賞の牝馬二冠・メイショウマンボが制した2013年は、1番人気の4歳馬ヴィルシーナ(10着)は安田記念、京都大賞典でともに8着と不振に陥っていた時期であった。

今年も古馬は距離の限界が囁かれるレイパパレ、脚元の炎症による調整遅れが懸念されるウインマリリンと不安要素を抱えている馬が中心。しかし、3歳馬アカイトリノムスメもまた、自滅したソダシや完調手前の状態だったオークス馬ユーバーレーベン、さらに世代ナンバー2のサトノレイナスも不在だった秋華賞を勝利したに過ぎない。

■条件好転のレイパパレが“主役”

「3歳馬 vs. 古馬」の結論は、やはり今年も古馬と見る。レイパパレは2200mで2連敗したが、宝塚記念で4着のカレンブーケドール以下に2馬身差の3着は上出来。関東輸送だった前哨戦のオールカマーも別定斤量56キロで3着にクビ差4着なら、絶望的な敗戦ではない。競り掛けられると脆い面はあるが自分のかたちに持ち込めば、コントレイルやグランアレグリアを完封した大阪杯のような強さを発揮する。叩き2戦目、関西圏、定量戦、何より牝馬限定戦であれば“主役”を張れる存在だ。

レイパパレは瞬発力勝負では分が悪く、C.ルメールも早めにレースを動かしてタフな競馬に持ち込んでくるはず。そうなれば相手は後方待機勢か。「後編(土曜17時公開予定)」では差し・追込勢から“穴馬”を取り上げる。

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著者プロフィール

山田剛(やまだつよし)●『SPREAD』編集長
アスリートの素顔を伝えるメディア『SPREAD』の編集長。旅行・アウトドア雑誌のライターを経て、競馬月刊誌「UMAJIN」の編集長として競馬業界へ。その後、Neo Sports社にて、「B.LEAGUE」「PGA」「RIZIN」等のスポーツ×ゲーミフィケーション事業に携わり、現在に至る。競馬は、1995年マイルCSの16番人気2着メイショウテゾロの激走に衝撃を受けて以来、穴馬予想を追求し続けている。

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