仕事と音楽に100%で200%に 有名企業社員によるフルアルバム SKYTOPIAとFrascoの自信作

アーティストでありビジネスマンだ。プロデューサーとして実績があるSKYTOPIAと、実力派ユニットFrascoが組み、互いにとって初めてのフルアルバム「UNNATURAL」が10日、配信リリースされた。新たなエレクトロミュージックを追求し、不自然派ポップスという音楽観を構築した両者は、有力企業で働くビジネスマンという共通項がある。SKYTOPIAは「仕事と音楽に50%ずつ投じるのではなく、100%ずつやり切ることで200%になると信じて疑わない」と語った。

(左から)タカノシンヤ、SKYTOPIA、峰らる

2019年初頭、音楽バーで出会った2人が意気投合したことが契機となったアルバム。SKYTOPIAは「Frascoと遊んでいるうちに全曲自信のあるアルバムが完成してしまいました!」と手応えを語れば、Frascoのタカノシンヤは「不自然派ポップスという新ジャンルを提唱しています。キャッチーでありながらもどこかに違和感を覚えるような箇所をたくさん作ったので、ぜひ楽しんでほしいです」と呼応した。

SKYTOPIAは有名外資系IT企業の日本支社で動画配信と音楽事業を担う。ロンドン出身で現地の大学を卒業後、音楽活動と並行して金融業で5年働いたが、期待したほどの親和性を得られなかった。金融業での残業が増え、音楽活動にも限界を感じたため、日本への移住を決意。東京で現職に入社した。これまでの音楽活動が評価され、仕事内容との相乗効果も期待できたことで、視界が開ける確信があったという。自然派シティポップユニット・KOMONO LAKEのメンバーとして活動し、プロデューサーとしては最上もが(元でんぱ組)、Emi Satellites(Satellite Young)らを手がける。母はアニメ「うる星やつら」の主題歌「ラムのラブソング」の作曲家として知られる小林泉美で、自身のビジネススキルを生かして小林の活動をサポートすることもある。

フルアルバム「Unnatural」ジャケット

タカノシンヤは「面白法人カヤック」で広告の企画やコピーライティングを行う。東京農業大卒業後は特別支援学校で理科を教えていたが、海外留学のため退職。カナダ、豪州で英語を学び、放蕩(ほうとう)生活の末にメキシコから帰国。外資系ITで勤務しながら学生時代以来のバンド活動を再開していた2015年、飲み会で居合わせた峰らるから「リズム感がいいので組みたい」と誘われFrascoが始動した。スマートフォンを用いた作曲に挑戦し、通勤時間などを使い年間100曲以上を作成。坂本龍一のラジオ番組に送ったデモ曲が高く評価され、飛躍の足がかりを築いた。イベントテーマ曲、NHK番組への楽曲提供が注目され、現職に移った。企業のPR案件を中心にクリエイティブの制作を行い、話題となった「うんこミュージアム」の音楽プロデューサー、フジテレビ「世にも奇妙な物語」のキャンペーン「西野ン会議」とメルカリ企画「インディーズ土産全国デビューへの道」ではプロジェクトマネージャーを務めた。一方の峰らるもアートディレクション、WEBデザイン、イラスト制作、MV制作、ゲーム開発、ARフィルター開発など多彩な仕事と音楽活動を並行させている。

両者とも「飽きっぽいから」と、活動の二者択一は行わない。「仕事上のトラブルが曲づくりのヒントになることがあります。PRや広告のノウハウは積極的に自分の音楽の拡散にも活用できます。クリエイティブな依頼をする際は相手の気持ちがよく分かるし、勇気を出して『この案件、私の音楽を使って下さい!』ということもあります」(SKYTOPIA)。「カヤックでは『チームで作品を作り出していく』ような、音楽活動と近いスタンスでやりがいを持って働いています。自分の個性と会社の仕事をうまくブレンドさせて、カフェオレを作るような働き方がモットーです」(タカノシンヤ)。音楽と会社業務を同じ熱量で取り組み、倍の成果を得ることを目指している。

「UNNATURAL」が切り開く新境地。SKYTOPIAは「なんだこれ⁉でもカッコいいー!って思っていただけるような曲を出し続けたい」と、タカノシンヤは「100年後のOLが聴いてクスッと笑ってくれるような、長く残る作品を作りたい」と決意を新たにしていた。

アルバム収録曲の制作アフタートーク配信時の記念撮影(左から)タカノシンヤ、MV監督のKairi Sato、SKYTOPIA、峰らる(SKYTOPIAインスタグラムより)

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

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