ソフトバンク逆襲のキーマンは、新「鷹の安打製造機」だ。今季、主要打撃部門すべてでキャリアハイをマークした栗原陵矢捕手(25)が、高い志を持って秋の宮崎で鍛錬を積んでいる。
秋季キャンプ(宮崎・生目の杜運動公園)第3クール初日の14日、栗原は特打で黙々とバットを振り続けた。巧みなバットコントロールで広角にはじき返される打球。巻き返しを期す来季へ、打撃に磨きをかけていた。
今季は全試合に出場して打率2割7分5厘、21本塁打、77打点といずれもキャリアハイをマークした。日本代表に選出された東京五輪では金メダル獲得に貢献。飛躍のシーズンとなったが、本人に達成感はなかった。「ふがいなさを感じました。自分がもっと打っていれば勝てた試合もあった」。8年ぶりにBクラスに転落した責任を痛感するところに、主力選手としての自覚が芽生えている。
今季は目標の「打率3割」には遠く及ばなかった。その悔しさを糧にバットを握る毎日だが、新シーズンの目標は明確だ。「やっぱり3割を目指していたら、3割には届かないんで。来年は3割2分を目指して打ちます」。心構えの部分でアプローチを変え、目標を上方修正して新シーズンに挑む。
藤本監督は現時点で、来季構想として栗原を左翼レギュラーに据えている。「今は外野を中心にやっています。もっと守備の面もうまくならないといけない。1つのアウトで流れが変わることが多い。守備の面も力を入れてやっています」。志願して臨む秋季キャンプでは、外野守備の強化にも余念がない。
この日、球団は栗原の背番号を「31」から「24」に変更することを発表。今季限りで現役を退いた長谷川勇也一軍打撃コーチ(36)の代名詞だった番号を来季から引き継ぐ。「自分で希望しました。長谷川さんという人に僕がホレた。『職人』と言われるような選手に、僕もなりたい」と言い切った。
背番号継承の背景には「性格的には真逆と思われるかもしれないですが、熱いプレー、全力プレーで引っ張る選手になりたい」という〝スタイル継承〟の誓いがあった。球団記録のシーズン198安打を放っている長谷川コーチを意識し、栗原は「199本を目指します!」と連呼。あえて「200安打」と言わないところにリスペクトが込められている。
ポストシーズンの裏で「鍛錬の秋」を過ごす栗原。優勝を逃す悔しさを知った25歳の目は、ギラついている。