【東京五輪】選手村のアスリートを陰で支えた理学療法士 各国選手「こんなに丁寧な対応、経験ない」

東京五輪・パラリンピックで培った経験を生かし、さらなるスポーツ界発展に寄与する玉置さん(右端)=本人提供

 東京五輪・パラリンピックで披露された各国選手の活躍の陰には充実した医療体制で支えた関係者の献身があった。横浜市スポーツ医科学センター(港北区)の理学療法士・玉置龍也さん(43)は選手村の総合診療所で従事した。

 大会を通じて得た知識と経験をどう形にして継承するか。新たな構想も携え、次の目標へ歩み出している。

 大会組織委員会から選手村に居住する各国選手、役員向けの総合診療所に派遣された玉置さん。競技、練習中のけがや疾病に対処するポリクニックの理学療法部門の副チーフとして活動した。

 大会前から理学療法士の採用、研修といった準備を重ね、1年延期を経て迎えた本番。現場では選手の細かな要望に応え、理学療法士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、アスレチックトレーナーらと連携して治療・ケアを円滑に進める調整役などを担った。

 「選手は気になることを取り除き、最大限の全力を尽くしたい。何かできることはないかと(診療所に)探しに来る感じでしたね」と玉置さん。不安要素を一つずつ消し去り、心身ともに充実した状態で最高のパフォーマンスは発揮された。

 今大会は五輪で初めて同じ建物に総合診療所とフィットネスセンターが配置された。1階で医師の診断と理学療法士の治療を受け、その足で3階の同センターに寄ってアスレチックトレーナーによる体の動作確認やトレーニングを受けられる仕組み。選手の負担は少なく、スタッフ間のスムーズな情報交換にも生かされた。

 利用者の評判は上々だった。 各国選手、役員からは「こんなに丁寧に対応してくれた経験はない」と賛辞も。玉置さんが国際オリンピック委員会(IOC)の関係者に意見を求めたところ、「世界標準で素晴らしい内容。逆にもっと発信した方が良かったんじゃないか」と返ってきたという。

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