“暴れ馬”の155キロ左腕が劇的進化 中日3位指名に導いた元鷹守護神「5割投球」指導

中日からドラフト3位指名を受けた火の国サラマンダーズ・石森大誠(左)と馬原孝浩監督【写真提供:火の国サラマンダーズ】

リリースポイントが安定したその指導方法とは?

最速155キロの左腕を復活させたのは、元ソフトバンク守護神が勧める練習法だった。独立リーグ・火の国サラマンダーズの石森大誠投手。動画を見たファンが「バケモノやんけ」と驚愕する剛球を武器に、今秋のドラフト会議で中日からドラフト3位で指名された。課題だったのは制球面。現監督の馬原孝浩投手コーチから提案された「5割投球」が実を結び、NPBへの道を開いた。

自慢の直球で打者をねじ伏せようと力みが生まれ、コントロールが定まらない。火の国サラマンダーズ入団前から悩んでいた。「力んだまま投げようとして、足を上げた段階で体がガチガチに固まり、関節が思うように動かなかった。そうすると、どうしてもリリースが不安定になり、どんどん悪い方向にいってしまった」。そう原因がわかったのも、ふとした一言のおかげだった。

「全力ではなく、5割くらいの力で投げてみればいい」

少年野球でも成功のヒントに…「5割投球」で劇的な変化

プロ通算182セーブを記録した馬原コーチから、キャッチボールの延長で力を抜いて投球練習するよう提案された。体の力を半減させるイメージ。今年の夏前から「5割投球」を取り入れると、コントロールは劇的に改善されていった。球速や球威を維持しながら、思い通りのコースへ。日ごろのブルペンから心がけ「試合で力んでも、リリースポイントが安定するようになった」と効果てきめんだった。

脱力する「5割投球」は、制球に悩む野球少年・少女の助けになる可能性がある。特別な道具や技術は必要ない。キャッチボールと同じような感覚で、力まないように投げる感覚を体に染み込ませる。そうすれば、自然と力が入る試合でも、制球を乱す場面が少なくなる。石森も「学生時代は、がむしゃらに投げるというのが自分の中にあった。そういう投手は多いと思う」と過去の記憶をたどる。

長年の課題だった制球難を克服し、挑む最高峰の舞台。「自分にとって最高のパフォーマンスができるのは中継ぎ、抑えだと思っている。プロでも自分の実力が発揮できる場所で、結果を残していきたい」。子どもたちや指導者にも参考になる「5割投球」は、NPBでもきっと成功のヒントとなるはずだ。

【動画】「バケモノやんけ」ファンも期待しかない石森の実際の投球映像

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