WorldRX電動化初年度『RX1e』に向け、EuroRX1王者バッケルドやミュニッヒらが2台体制を構築

 WorldRX世界ラリークロス選手権で、2022年からの導入が予定される電動最高峰“RX1e”クラス初年度に向け、現在はセアト・イビーザを走らせるオールインクルーシブ・ミュニッヒ・モータースポーツと、2021年のEuroRX1でドライバーズタイトルを獲得したアンドレアス・バッケルド擁するESモータースポーツが、ともに2台体制での参戦をアナウンスした。

 0-100km/h加速わずか1.8秒というF1をも上回るパフォーマンスの新時代エレクトリック・ラリークロスに向け、先月の10月時点で「来季14台のエントリー」があることを確約したオーガナイザーの発表を受け、すでに3台の発注を明かしていたクリストファーソン・モータースポーツ(KMS)に続き、現在もシリーズにコミットする2チームの世界選手権参戦計画が明らかにされた。

 この電動マシンはオーストリアのEVパイオニア企業であるクライゼル・エレクトリック社が、ラリークロス・プロモーターGmbHおよび統治機関であるFIA国際自動車連盟と緊密に協力して開発および製造したKit(キット)となり、ツインモーターの総合出力は500kW(約689PS)に到達。瞬間的に880Nmものトルクを発生する。

 容量52.65kWhのバッテリーを含むシステム重量は300Kgで、独自の安全機能を備え、重量配分を考慮した特別設計とされる。車両全体の総重量は1330kgに規定され、フロントアクスルとリヤアクスルで独立したモーターはカーボンラップされ、高性能トランスミッションとプリロードオプション付きのLSDを装備する。

 キット化されたユニット全体は既存のRXスーパーカーの内燃機関をコンバートして搭載することも可能なら、まったく新しいシャシーに組み込むことも許可されており、14のキットは「すでに新規および既存のチームによってオーダー予約がなされている」と発表されていた。

 その枠のひとつを担うと明かしたオールインクルーシブ・ミュニッヒ・モータースポーツは、2014年にWorldRX参入を果たすと、ドイツのザクセンを拠点とするチームは代表権ドライバーのレネ・ミュニッヒを中心にラリークロス・シーンで確固たる地位を築いてきた。

 2020年には元DTMドイツ・ツーリングカー選手権“2冠”のティモ・シャイダーがスウェーデンで3位表彰台を獲得すると、2021年はEuroRXを主戦場としたミュニッヒが、40年近いシリーズの歴史上初となる最初のドイツ人勝者に輝くなど、大きな戦果を残した。

2021年はEuroRXを主戦場としたレネ・ミュニッヒ代表が、40年近いシリーズの歴史上初となる最初のドイツ人勝者に輝いた
今季は元DTMドイツ・ツーリングカー選手権“2冠”のティモ・シャイダーをエースに、女性ドライバーのマンディ・アウグストを起用した
RX1e用KitはオーストリアのEVパイオニア企業であるKreisel Electric(クライゼル・エレクトリック)社が開発を担った

■強豪2チームの参戦表明に「新時代における確固たる指標になる」とプロモーターは歓迎

「2022年のFIA世界ラリークロス選手権に2台のクルマを投入できることを光栄に思う。レネ(・ミュニッヒ)は長年にわたってシリーズの素晴らしいサポーターであり、より持続可能な未来のための新しいプロモーターのビジョンを強く信じている」と語るのは、オールインクルーシブ・ミュニッヒ・モータースポーツのチームマネージャーを務めるドミニク・グレイナー。

「チームとして、我々は新たなテクノロジーを採用することに非常にオープンで熱心だ。短くて鋭いフォーマットのラリークロスは、電動化に向け理想的なカテゴリーだと言える。引き続きICE(内燃機関)を搭載するEuroRX1への継続的な取り組みも含め、WorldRXのエキサイティングな新しい夜明けからサインアップすることは、完全に理にかなっている。チーム全員、このふたつの補完的プログラムに貢献することに、非常に意欲的だよ」

 一方、2021年は熟成を重ねてきたシュコダ・ファビアRXスーパーカーでEuroRX1のタイトルを獲得したリトアニアのESモータースポーツは、新王者バッケルドとヤニス・バウマニスの2台体制で戦ったシーズンの経験を踏まえ、チームマネージャーであるロベルタス・マネイキスは「長い社内討論の末、2022年にWorldRXに参入することを確認でき興奮している」と、さらなる発展を目指す決意を固めた。

「ほんの数年前でさえ、ラリークロスでこのような進化を遂げることは考えられなかったが、ここにはより明るい未来がある。新時代へのこの大きな移行の一翼を担えることにワクワクしているよ」と続けたマネイキス。

「今季EuroRX1で挙げた戦果は、我々に世界で最も熟練した経験豊富なライバルと戦うための新たな火をつけた。明らかに容易ではないが、電動化時代の挑戦に大いなる期待を抱いているんだ」

 この強豪2チームの電動クラス参戦表明に際し、ラリークロス・プロモーターGmbHのエグゼクティブプロデューサーを務めるアーネ・ディルクスも「彼らのプロ意識、専門知識が、チャンピオンシップの明るい新時代における確固たる指標になる」と歓迎の意を示した。

「15年前にチームを結成して以来、レネのこのスポーツへの多大な情熱は、組織をトップへと押し上げる原動力になった。彼が今季初めて欧州選手権で優勝したことにも、我々は皆喜んでいる」

「そして、ESモータースポーツが見せたEuroRX1での成功は、彼らが非常に厳しいカテゴリーに対して、必要なすべての品質を備えていることを証明している。それは最高レベルで輝くための資格であり、彼らがグリッドに並ぶのは素晴らしいことだ」

2021年はアンドレアス・バッケルドとヤニス・バウマニスの2台体制でEuroRX1を戦ったESmotorsport(ESモータースポーツ)
2021年開幕直前に“11時間の”契約交渉でフル参戦シートを確保したアンドレアス・バッケルドは、そのままEuroRX1王者に昇り詰めた
今回の2チームに先行し、電動最高峰“RX1e”クラス初年度に向けてはKristoffersson Motorsport(クリストファーソン・モータースポーツ/KMS)も3台体制での参戦を確約している

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