病気や障害のある兄弟姉妹がいる「きょうだい児」を主役にした絵本「ぼくはチョココロネやさん」が10月、発行された。作者は長男が小児がんを経験した栄島佳子さん(50)=横浜市西区。次男の一歩(かずほ)くん(6)の言葉から生まれた1冊には、病気などと闘う当事者の周りにいる子どもへの理解が広がってほしいという思いが込められている。
栄島さんの長男で中学2年生の四郎さん(14)は3歳で脳腫瘍が見つかり、手術や治療を経験。レモネードを売って小児がんの子どもを支援する「レモネードスタンド」を開くなどの活動を行っている。
病気や障害のある子どもがいると、家族や周囲の大人はどうしても当事者に目が向きがちになる。四郎さんの活動が注目を集める傍らで、一歩くんは「寂しい思いをしていた」と栄島さん。「いつもお兄ちゃんばかり。僕の絵本を作って」と頼まれ、「小児がん患者を支える活動で、きょうだい児の支援もしているのに自分の家でできていなかった」と2019年の秋に制作を開始。作画は友人の、かわしりきょうこさんが手掛けた。
絵本の主人公はきょうだい児の男の子。お兄ちゃんは小さい頃に病気をして、今も治療を続けている。レモネードスタンドの活動もしていて、男の子は「つまらない」と不満を募らせる。でも、お母さんと一緒に大好きなチョココロネを作ると、「ねーねー、おにいちゃーん」と兄の元に駆け寄っていく。日常を楽しく描きながら、小児がんの当事者ときょうだい児の姿を伝える物語になっている。