J1横浜マリノス 復権支えた陰の立役者、今季限りで退任 強化担当・小倉勉氏

今季限りで退任するJ1横浜Mの小倉スポーティングダイレクター=横浜市内

 J1横浜Mの復権を支えた陰の立役者、小倉勉スポーティングダイレクター(55)が今シーズン限りで退任する。5季にわたって強化担当を務め、2019年には15年ぶりのリーグ制覇に貢献。今季も川崎と首位争いを演じたチームを側面から支援した。クラブを離籍するときが刻々と近づくが、何度も鼓舞されたというサポーターのためにも全力を尽くす。

 大学卒業後、高校の指導者を経て渡欧。ドイツで経験を積み、帰国して以降は日本代表コーチとしてオシム、岡田武史両監督をサポートしたほか、大宮や千葉などで監督やコーチを歴任した。

 横浜Mには17年から在籍。18年途中に現職に就き、時には親会社の日産自動車に補強を掛け合うなど、強化を担うチーム統括本部と現場の調整役として奔走した。

 一番の思い出に挙げたのは栄光をつかんだシーズンではなく、危機にひんした18年だ。攻撃重視のポステコグルー氏を監督に招いての1年目。名門を下支えした堅守が破綻し、終盤までJ2降格がちらつく苦難の戦いを強いられた。

 改革への道を後押ししたのが「このまま(のサッカーを)やり続けて」というサポーターのエール。「声援に勇気付けられた。スポンサーも含めてサポートしてもらわなければ19年(の優勝)はなかった」と話す。

 15年ぶりの歓喜に沸いた最終節の日産スタジアムの光景が今も脳裏に焼き付いている。12月7日のゲームに集まった観客は、リーグ史上最多の6万3854人。「(日本)代表のコーチもやっているので大観衆には慣れていたが、あれ以上のものはない。Jリーグでもこれだけの観客が入り、盛り上がる試合ができるようになったんだ、と感慨無量だった」

 ことし6月、攻撃的なスタイルを築いたポステコグルー氏がセルティック(スコットランド)に移籍。「マリノスでやったことが認められて(欧州に)行ったので選手の自信にもなったと思う」と言う。シーズン途中での監督交代という難局にも「選手、スタッフが一つになり、ガタガタと崩れないでやってこれたのが、今の成績につながっている」と評価した。

 今後については未定で「就活中」と言うが、クラブ愛は不変だ。「優勝できなかったのは残念だが、あと一つ何か足りないところを埋めれば上に行ける。このクラブにはすごく良いサポーターがいる。マリノスには頑張ってもらいたい」

© 株式会社神奈川新聞社