朝鮮の戦争抑止力と「対北抑止力」、何が違うのか 主権を守る盾と侵攻作戦のための手段

現在、朝鮮は「国防科学発展及び兵器システム開発5カ年計画」(2021~25年)に沿って戦争抑制力を強化している。一方、朝鮮の敵対勢力は自衛のための力に「挑発」、「脅威」のレッテルを貼り、これを抑止するという口実で武力増強を進めている。

一方が盾をつくり、もう一方は矛を振りかざしているという状況だ。

国防発展展覧会「自衛―2021」(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

自衛力に「脅威」のレッテル

 朝鮮が公式声明や談話などで述べている戦争抑止力と、これを無力化しようとする勢力が頻繁に使う「対北抑止力」は、語彙の意味とその本質が異なる。

朝鮮は国の自主権と生存権を守るために文字通りの戦争抑止力を構築してきた。ところが1950年代の朝鮮戦争以来、交戦関係が続く相手国はそうではない。

現在、米国は国防の目的をはるかに超えて、自らの利益領域をインド太平洋地域に広げ、覇権追求のために膨大な武力を動員している。日本、南朝鮮との「防衛同盟」も、覇権戦略の根幹である軍事力の海外配置及び展開を合理化するための仕組みだ。

朝鮮の自衛力を「脅威」と規定する勢力も、「国防力」について述べているが、その実体は侵攻と制圧のための軍事力だ。

すでにある作戦計画の目的とそれに伴う軍事力の構成が如実に表れている。

北侵戦争シナリオに基づく米南合同軍事練習が強行されている。

現在も中断なく強行されている米南合同軍事演習は「作戦計画5015」の実戦可能性を検閲、確証するための文字通りの戦争演習だ。

「5015」の核心として知られる「北の核兵器使用兆候をつかんだ段階での先制攻撃」、「北の急変事態発生時の米南連合軍投入》などは防御の概念ではない。侵略と体制転覆をねらうこの計画には「北の首脳部をねらった斬首作戦」も含まれる。

「5015」のための武力構成

 米・南が「国防力」と称する兵器と軍事装備、兵力は合同軍事演習期間に「5015」が定める目的に沿ってその性能と戦闘力が検証されている。

2019年に南朝鮮軍に導入され始めたF-35ステルス戦闘機は、「斬首作戦」および「対北先制打撃」の基本戦力たされている。南の軍部はF-35がレーダーに捉われることなく飛行士、標的を正確に打撃する動画を公開したこともある。この戦闘機は2021年末までに合計40機が導入される予定だ。

-35ステルス戦闘機

近年、南朝鮮は米国の後援により、ステルス戦闘機以外にも高高度無人偵察機をはじめとする米国産先端兵器を搬入している。無人偵察機の用途も、朝鮮半島における作戦計画によって決まる。昨年1月、米国がイランの革命防衛隊司令官を無人機ドローンの空爆により殺害した事例は記憶に新しい。

南朝鮮は米国産兵器を購入する一方で「自衛国防」を喧伝しながら、ミサイル能力の向上をはじめ、潜水艦戦力の強化、戦闘機開発など多岐にわたって攻撃用軍事装備の更新を進めている。

このような攻撃手段の増強は、朝鮮の「脅威」を抑止するという目的によって正当化されている。

米・南は、軍事力において朝鮮より優位を占め「作戦計画5015」の侵略的目的を達成する-という意味で「対北抑止力」という語彙を使っている。

「核抑止」という語彙の使い方も同様だ。

現在、米国は南朝鮮に「核の傘(nuclear umbrella)」という概念を超えて「核拡張抑制(extended deterrence)」を提供すると述べている。「同盟国」が核攻撃を受けた場合、大陸間弾道ミサイル(ICBM)と潜水艦発射ミサイル(SLBM)、戦略爆撃機など、いわゆる3大核打撃手段で報復するというものだが、2002年に「核態勢の見直し(NPR)」を公表し、エミサイル防衛(MD)と超精密攻撃態勢を追加した。

これは「敵の核使用徴候をつかんだ段階での核先制使用」の可能性を含んだ概念だ。朝鮮は米国の「NPR」で核先制攻撃対象とされた国だ。

  朝鮮の主敵は「戦争そのもの」

 一方、朝鮮は交戦相手の戦争威嚇に対抗し、正々堂々と自衛権を行使してきた。

2006年、初の地下核実験も外務省声明を通じて事前予告してから実施した。6日前に発表された声明は「朝鮮は絶対に核兵器を先に使用することはなく、核兵器による威嚇と核拡散も認めない」と宣言した。

核戦争の防止が目的である弾道ミサイルの開発と試射も、透明性を重視し、メディアを通じて、その技術指標と特性を公開してきた。

2017年、ICBM試射成功により国家核武力が完成した後も、信頼できる戦争抑止力を構築するために戦略戦術兵器システムをたゆまなく開発生産し、その目的が自衛であると説明してきた。

実際、朝鮮は同族を傷つけるために、他国の核攻撃手段を搬入したことはなく、海を越え遠い他国の地に砲弾を撃ち込んだこともない。

国防発展展覧会開幕式で記念演説を行う金正恩総書記(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

「わが党の国防政策の真髄は、自らの力で祖国と人民を守ることであり、絶えず発展向する強力な防衛力によって、その脅威と挑戦も抑止し、平和を頼もしく、揺るぎなく守護することだ」(金正恩総書記が国防発展展覧会開幕式で行った記念演説 2021.10.11)

いま、新たに開発した戦略戦術ミサイルの試射を行っているのは、朝鮮の主権が行使される領土と領海、領空でわずかな炎でも上がることを決して許さないという強力な反戦意志を担保する現実的な力、鉄壁の盾を検証することに目的がある。

9月30日に行われた新型対空ミサイル試射(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

北東アジア地域の軍事的不安定が深まる現在、我々は誰かとの戦争を論じているのではない、我々の主敵は戦争そのものであり、特定の国家や勢力ではないと公言する国は朝鮮だけだ。

世界の注目を集めるこの国の自衛力強化措置に貫かれているのは、平和を守ること、すなわち朝鮮半島で同じ民族同士が、武力を持ってたたかう不幸な歴史は繰り返されてはならないという、揺るぎない観点と立場だ。

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