北朝鮮「女性兵士」の秘められた実態…上官に蹴られ、召使のように

泥だらけの道を行進中に手足が揃っていないと上官から蹴りつけられる。何か間違いを起こしたのか、上官から怒鳴りつけられる。

いずれも、中国側から国境の川越しに撮影された朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の女性兵士の悲惨な生活を収めた動画に写った光景だ。この動画には、非常に興味深いシーンがいくつも収められている。

YouTubeチャンネル「アリランday」で動画が公開されたのは今年8月。緯度の高い北朝鮮北部とは言えども、相当の暑さのようで、掘っ立て小屋のような兵舎の屋根に草を載せていく光景も動画に収められている。動画を見る限り、兵舎は恒久的な施設ではないように見受けられることから、彼らは国境警備のためにこの地域に派遣された特殊部隊「暴風軍団」の可能性がある。

また、しゃがみこんで葉を磨く男性の軍官(将校)の前で、水を入れた手桶を持って待つ女性兵士の姿も見える。生殺与奪を握る軍官に対して、召使いよろしく振る舞わなければ生き残れないのだろう。

ナレーションを担当する脱北者の女性2人は、朝鮮労働党に入党するにも軍官の覚えがめでたくなければダメだとし、「入党するのに、女性たちは、その……」と言葉につまりながら、軍内で横行する性上納強要の実態を示唆した。

北朝鮮当局は現在、脱北、密輸をより効果的に防止するために、国境線沿いにコンクリート壁と高圧電流の流れる電線の設置を進めているが、動画には重そうなコンクリートの柱を女性兵士が5人がかりで担いで歩き、堤防ぞいに立てるシーンが写っている。コンクリート壁の設置工事の様子を収めた非常に貴重な動画だ。

動画にはさらに興味深いものが写っている。

垣根に囲まれた掘っ立て小屋。玄関の上には白地に赤文字で「隔離室」と書かれている。敷地の入口では、防毒マスクを頭の上に載せ防護服を着た女性3人が、トゥルチュク(クロマメノキ、ブルーベリーの一種)を食べながら談笑している。これは軍当局が設置した、新型コロナウイルスの疑い患者を隔離する施設と見て間違いないだろう。

北朝鮮からは、コロナそのものではなく、隔離施設の環境の劣悪さで病気が悪化して亡くなったとの報告が複数入ってきているが、この動画を見ると、その環境のひどさがよくわかる。

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