アンディ・ウォーホルのあまり知られていない話。レベレーション=隠してきたものとは? Andy Warhol: Revelation

By 「ニューヨーク直行便」安部かすみ

母親と自分のポートレート。(c) Kasumi Abe

アンディ・ウォーホルと言えば、マリリン・モンローやキャンベルのスープ缶のシルククリーン画を、きっと誰もが思い浮かべるだろう。

だが、この企画展にはそれらの代表作はない。

あるのは、宗教画のマリア様、十字架、最後の晩餐(The Last Supper)、スケルトン、母ジュリアの肖像画など。ポップアートの巨匠としてはあまりこれまで目にしなかったものだ。

この企画展を訪れるまで知らなかったけど、彼の両親は敬虔なビザンチンカトリック教徒(byzantine catholic)で、今でいうスロバキアから20世紀初頭にアメリカに渡ってきた労働者階級の移民一家だった(アンディはペンシルベニア生まれ)。経済的に決して豊かではなく、また移民として言葉もわからないから肩身の狭い生活だったが、家族(特に母親)は彼の才能に着眼し、アート活動を支援した。

アンディは、ニューヨークでアーティスト活動を本格化させるにあたり、本名(アンドリュー・ウォーホラ、Andrew Warhola)を短くして名乗り、移民の労働者階級出身であることを隠した。

生涯にわたって自身も教会に通ったが、実は彼はゲイだった。

ニューヨークでは、カトリック教とは相反する、今でいうLGBTQの交友(セックス、ドラッグ、ロックンロール)の関係も広がっていった。

これもちろん現代の話ではなく、1928年生まれで、50年代以降にアメリカで花開いた芸術家の話。(アンディがもしまだ生きていたら93歳)

当時のニューヨークといえど、ジェンダーアイデンティティ(Gender identity)とかLGBTQとかの言葉がない時代ですから、芸術家として、一人の人間としてこの国で生きていく中で、時に本当の自分を隠し、偽り、愛する母親を傷つけたくないがための葛藤や苦悩があったことだろう。私の想像を絶するものだが、それをバネに彼は時代を超越し、死後も愛される偉大なアーティストに大成した。

どんな天才だって、どんなセレブだって、人に言えないことあるよね、ウンウン。そのほうが人間らしくていいわ。

(c) Kasumi Abe
1956年に見た日本のお寺(金閣寺?)などに影響を受けた。(c) Kasumi Abe
「え〜これアンディの作品?!?!」と思ったら、ちゃんとアンディのサインがあった。(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe
(c) Kasumi Abe
晩年の作品はスケルトン画が多い。(c) Kasumi Abe

企画展は11/19からいよいよスタート。来年6/19まで開催。

#WarholRevelation

Andy Warhol: Revelation(アンディ・ウォーホル:レベレーション展)

11/19, 2021~6/19, 2022

Brooklyn Museum
200 Eastern Pkwy, Brooklyn, NY 11238

Text and photos by Kasumi Abe 安部かすみ 無断転載禁止

© 安部かすみ