S耐第6戦岡山でGRスープラのST-Z初優勝をもたらしたFABULOUS GRMI GT4。一年の最後に笑顔

 11月14日、岡山県の岡山国際サーキットで決勝レースが行われたスーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankook第6戦『スーパー耐久レースin岡山』。GT4車両で争われるST-Zクラスは今季いちばんの激戦となっていたが、2021年の多くの台数が参戦したトヨタGRスープラGT4の初勝利を、鈴木宏和/久保凜太郎/塩津佑介/佐藤公哉組FABULOUS GRMI GR Supra GT4がもたらした。

 2019年からトヨタカローラ新茨城が運営するC.S.I Racingとしてスーパー耐久に挑戦したチームは、2020年にST-4クラスでチャンピオンを獲得。2021年は、ST-4クラスに坪井翔/細川慎弥/堀尾風允のトリオで参戦する一方、新たにトヨタGRスープラGT4を投入。福島県で『FABULOUS(ファビュラス)』のブランドでハイエンドラグジュアリーブランドやゴルファーに人気のブランドをセレクトするK-ALBAをスポンサーに迎え、FABULOUS GRMI GR Supra GT4をST-Zクラスに投入した。

 シーズン前のテストから好調ぶりをみせていたFABULOUS GRMI GR Supra GT4は、第2戦SUGOでポールポジションを獲得。以降、予選では鈴木と久保がアタックを担い、全戦でポールポジションを獲得。ただ、決勝では給油時間がかかることもあり、なかなか結果を残せていなかった。流れがようやく変わりはじめたのは、第5戦鈴鹿。2位に入り、初めての表彰台を獲得した。

 ただチームのマネージングも務める久保は、「同時にクルマのウイークポイントもすごく見えましたし、鈴鹿の後からずっと岡山の3時間レースでどう戦うかを考えていました。走り方やセットアップなど、今回のレースウイークに入ってからも、乗る順番や作戦も考えていました」と“勝つため”に考えを巡らせていたのだという。

 そして今回もポールポジションからスタートするが、スタートドライバーに鈴木を据え戦うことを決断した。混戦をジェントルマンドライバーに任せ、空いているタイミングでプロに任せればタイムは稼げるが、序盤にセーフティカーが出てしまえば作戦は成功しない。

 結果的に「攻めた」この作戦はうまくいく。鈴木はポジションこそ落としたものの上位を守り切り、久保にバトンを繋ぐことに成功した。「(2位に入った)D’station Racingさんも同じ作戦を採ってきたということは、いちばんゲインがある作戦だったと思うので、悪くはなかったのだと思います」と久保。

「僕たちは給油が遅いので、ライバルよりも前でレースをしないと難しい展開になってしまう。今回はそれがうまくいったのが良かったです。ジェントルマンドライバーの鈴木選手も速かったですし、僕のときはリヤ二輪交換でいきました。D’stationさんは無交換できましたが、そこでの差もあったかもしれません。最後は公哉がしっかりまとめてくれました」

 作戦的中、そして速さが結びつき最終戦を制したFABULOUS GRMI GR Supra GT4の勝利は、トヨタGRスープラGT4にとってもスーパー耐久ST-Zでの初優勝となった。そしてこの勝利は、C.S.I Racingをまとめてきた久保にとっても、いろいろな思いが詰まった勝利となった。

序盤アスラーダ Ver. Supra、TKRI 松永建設 AMG GT4と競り合うFABULOUS GRMI GR Supra GT4

■さまざまな思いに最終戦の勝利で応える

 実はFABULOUS GRMI GR Supra GT4は「シーズン途中でお金が足りなくなり、レースに出られなくなるかと思っていたんです。だから富士24時間も出なかった」と久保はST-Zでレースが続けられない可能性があったことを明かした。ただここで、「メインスポンサーをしてくれたFABULOUSさんが『最終戦まで面倒をみるから、最後までやってほしい』と言ってくれたんです」と最終戦まで活動を続けることができた。

 そんなFABULOUSは今季、フォーミュラドリフト・ジャパンに参戦するSPEEDSTER Racing with team ORANGEをサポートしており、スーパー耐久第6戦岡山の前日、富士スピードウェイで行われたフォーミュラドリフト・ジャパン第6戦富士では、SPEEDSTER Racing with team ORANGEの熊久保信重が優勝。「その優勝した勢いでこちらにも来てくれて。カテゴリーは違いますが、良い流れをもってきてくれました。『勝負かけます』と挑んで、社長さんがいる前で勝てたのは良かったです」と久保は最高の恩返しができたことを喜んだ。

 さらにこの日、午前中のグループ2の決勝レースは、C.S.I Racingから参戦した310号車GRGarage 水戸インターGR86は、チャンピオンをかけてのレースだった。序盤から坪井が快走をみせ、堀尾風允に交代してからも、序盤エンジンの不調で遅れていた林テレンプ SHADERACING 86をリードする展開となっていた。

 しかし、GRGarage 水戸インターGR86にも突如エンジントラブルが起きてしまう。1点差で争っていたチャンピオン争いはまさかの決着となってしまい、連覇はならなかった。久保も沈痛な表情でピットで見守っていたが、そのGRGarage 水戸インターGR86の悔しさを晴らす勝利を午後のグループ1決勝で飾ることができた。

「スタート前は『86の分も頑張るよ』と言ってはいましたが、86は86のレースがあるし、スープラはスープラのレースですからね。86は頑張っていたけど些細なことでうまくいかなかった。でもみんなが頑張っているチームですから。悔しい思いを少しは晴らすことができたかな、と思っています」と久保。

 まさに地獄から天国。C.S.I Racingとしては、支援してくれた人たちに恩返しを果たし、シーズンを終えることができたと言えるだろう。

表彰台でセルフィーを撮る鈴木宏和/久保凜太郎/塩津佑介/佐藤公哉組
GRGarage 水戸インターGR86

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