日本一トリオのコーチ就任が“最大の補強” 最下位に沈んだDeNAを立て直せるか?

DeNA・三浦大輔監督【写真:荒川祐史】

1998年“ベイスターズ最後の優勝”に貢献…負け癖を解消へ

DeNAは三浦大輔監督就任1年目の今季、6年ぶりにリーグ最下位に沈んだ。シーズン終了後、まずメスが入ったのはコーチングスタッフだった。来季へ鈴木尚典、石井琢朗、斎藤隆の各新コーチと契約を締結。役職は後日発表されるが、いずれも1軍で三浦監督の脇を固めると見られる。3人は現役時代の1998年、ベイスターズの日本一に貢献。レジェンドたちが最大の“補強”となるかもしれない。

3人は早くも横須賀市内のファーム施設などで行われている秋季トレーニングに合流し、指導を始めている。18日に契約を更改した楠本泰史外野手は「鈴木さん、石井さんから『レギュラーを抜くつもりでやれ』と言っていただいた」と明かし、笑みを浮かべた。

DeNAの外野陣は、レフトの佐野が今季打率.303、センターの桑原が.310、ライトのオースティンもわずかに規定打席数に届かなかったものの.303をマークして盤石だ。代打の切り札として活躍した楠本を含め、控え選手にとって壁は高い。そんな中、新コーチからの早速の激励は胸に響いたようで、優秀なモチベーターぶりをうかがわせる。

2度の首位打者、名球会入り、日米通算112勝139セーブのレジェンドたち

この3コーチは三様に、抜群の実績を誇る。鈴木コーチは首位打者に2度輝き、通算1456安打、通算打率.303。楠本が「現役時代、打撃で一番大事にしていたことは何ですか?」と質問すると、「間(ま)を取ること。先に自分の形を作り、相手投手のボールが来るまでいかに長く待てるかにかかっている」と即答。楠本を「すごく参考になった。練習方法なども、これから時間を見つけて聞いていきたい」と感激させた。

石井コーチは、通算2432安打を積み上げ名球会入り。最多安打のタイトルを2度、盗塁王を4度獲得した。指導者としても広島、ヤクルト、巨人でコーチを歴任し、名伯楽として定評がある。DeNA打線は今季、リーグ2位のチーム打率.258、559得点を誇った半面、12球団ワーストの31盗塁が示すように、機動力に欠けた。そんな課題克服にも、石井コーチは大きな役割を果たしそうだ。

斎藤コーチは投手として、DeNAの前身である横浜大洋ホエールズ、横浜ベイスターズで活躍した後、メジャーリーグへ移籍。日米通算112勝96敗139セーブを記録している。新コーチとして、リーグワーストのチーム防御率4.15からの改善を担うことになる。

18日に契約を更改した石田健大投手は「斎藤さんは、僕が今まで気づいていなかったところを指摘してくださり、今までと違う観点から見て下さっている」と述懐。「上半身で頑張るのではなく下半身で粘って投げることとか、基本的なアドバイスが多いですが、僕にとっては新鮮です」とうなずいた。

3人に共通するのは1998年、日本一に輝いたベイスターズの主力選手だったこと。石井コーチは“マシンガン打線”の1番、鈴木コーチは3番として猛打を振るった。斎藤コーチは先発とリリーフでチームトップタイの13勝(5敗1セーブ)を挙げた。

その後のベイスターズは、2019年にシーズン2位からCSを勝ち上がり日本シリーズに駒を進めた事こそあったが、リーグ優勝は1度もない。栄光を知る3コーチの加入は、チームの“負け癖”解消に寄与するはずだ。3人がそろってベイスターズのユニホームを着ている光景だけでも、ファンにとっては感涙モノ。レジェンドコーチたちがどうチームを変えていくのか、目が離せない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

© 株式会社Creative2