人事のプロが教える「就活の裏の本当のこと」 第3回 「自己PRネタが無い」と困った時のコツ

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こんにちは、人事・戦略コンサルタントの松本利明です。私はPwC、マーサー、アクセンチュアなどの外資系大手のコンサルティング会社で24年以上、600社を超える企業の人事コンサルティングをしてきました。

その経験から就職活動の現場をみると、「就活のセオリー」と言われている内容には、実はドツボにはまってしまうものもあるのです。

この連載では「人事の『裏」」を知り尽くした視点から、本当に使える就活のコツを解説します。

差別化できるエピソードがなくても絶望しなくていい

前回、解説したように、大学生はゼミアルバイトなど、どうしても経験が似てしまうので、差別化する「強み」は見つかりにくい。当然、自己PRにつながるエピソードも似たり寄ったりになることは否めませんが、ご安心ください。

就活には期間があります。その期間中にエピソードをつくればいいのです。前回の記事のエピソードを参考にしましょう。TOEIC660でバイリンガルが当たり前な商社の面接の時の例です。

「私はベトナムに友達が100人います。同じ趣味のコスプレ仲間です。彼らとオンラインでやり取りしていると、御社の製品の話題によくなるのです。実際使ってみて……とみんな言っていました」

こう話し始めることで、面接官に

「あ、この人、ベトナムの人の輪に溶け込み、趣味の分野でリードできているんだな。海外赴任しても現地になじみ、本社とうまくつないでくれる可能性を感じる」

という好印象を与えたエピソードです。

このようなエピソード、就活前の学生生活の時にやってこなかったと嘆く必要はありません。今からやれば就活の面接時に間に合います。

今から残りの期間でエピソードを作る

大事なことは、面接官に「この人が我が社にあっているかな、一緒に働きたい」と思ってもらうため、面接での基準をクリアするための仮説立てを前回解説しました。

グローバル企業であれば語学力より、「現地になじんで本社との橋渡しができる」素養があるかどうで見極める、という仮説をもとに、選んだエピソードです。

あなたも、就職したい企業で就活生に求める要件をHPや説明会と合わせ、企業研究をする中で設定し、「どんなエピソードだったらヒットするか」を考えましょう。

そして、その企業へエントリーするまで、そのエピソードづくりを行えばいいのです。

先ほどの例であれば、Twitter、Facebook、などのSNSを活用し、同じ年頃のベトナムの現地のひとに趣味をきっかけにして友達になり、就職したい企業やその商品が現地でどう受け入れられているかを聞き、その声を集め、整理すればいいのです。

英語に自信がなければ翻訳ソフトを使ってもかまいません。企業研究をする一貫として行うノリで構いません。

GoogleやOB/OG情報からとれる情報はある意味誰でもとれるので差別化は難しいです。一番貴重な情報はいつでも現場の一次情報。その一次情報を取りに動いてみるだけで、他の就活生にしかみえない生情報が簡単に手に入ります。

行動せずに悩んでいても、何も生まれません。考えてもないものはない。必要なエピソードがなければ今から作れば就活に間に合います。

自己PRの「2つのコツ」

誤解があってはいけませんが、ないエピソードを空想や捏造するのは絶対にNGです。面接官は百戦錬磨です。一発で見抜かれてお終いです。

また面接対策のテクニックに走るのは止めましょう。そこに力や時間を使うより、エピソードにつながる事実を積み上げること。事実が一番強いからです。コツが2つあります。まずは、始めた理由からきちんと話すことです。

「御社の業界に興味をもち、ベトナムに工場がある企業が多いことを知りました。そこで、ベトナム人の友人をSNSで沢山作りました。ベトナムで日本企業やどうみられているか? どんな商品が人気かを聞いてみました。すると誰もが御社の商品が一番だ。理由も……と共通しています。なので、御社に興味を持ちました」

と、噓偽りなく伝えるほうが正しく伝わります。

もう1つのコツは、その取り組みを通して、気付いたこと、学んだことを伝えることに加え、この取り組みを活かし、さらに現在や未来でどんな活動につなげるか自己PRすること。

「そこから他の国にも興味がわき、ベトナムの次に御社の工場があるインドでも、同様にSNSで知り合った友人から、日本企業や御社の業界、御社とその商品がどうみられているかを聞きました。国によっていろいろ意見が違いましたが、特に●●という声が多かったです。アジアの国全般への興味が強くなり、次はタイでも同じ試みをしたいですね。実は私はアニメ好きで、現地で日本アニメが大人気……。コロナ禍が収束したら、日本のコミケを一緒に案内することになりました」と現在進行で答えればいいのです。

このように、事実ベースで伝えれば、あなたがテーマを自ら掴み、どうリードできるかが面接官の頭に綺麗に浮かびます。「アジアでリーダーシップを取る~」的な一般的な自己PRより、事実のエピソードのほうがはるかに説得力を持つことは、あなたも感じたでしょう。

エピソードが完璧なストーリーにならなくてもかまいません。逆に完璧すぎるストーリーは嘘くさくなるからです。

実は自律的に考え、動き、偉ぶらない人こそ企業が欲しがる

キーになるのは、嘘偽りなく、自分の興味関心に沿って動いたことから生まれるエピソードであることです。就活がキッカケでも構いませんが、就活対策の意識しかないと深掘りできないし、長続きしません。興味関心に沿ったことなら、ワクワクするし、深掘り、広がり、応用がきいてくるし、無理なく楽しみながら続けることができます。

エピソード集めの期間が短くてもかまいません。今、企業は自律的に考え、素早く行動し、そこから学び次につなげられる人を渇望しています。正解を求める人が多く、自ら考え「正解を作りあげていく」人が圧倒的に少ないからです。

興味を持ち、すぐ動き、学び次つなげる、この自律的な行動ができるということを、現在進行形のエピソードが証明してくれるからです。

企業の決算は、毎月、四半期、半年、一年など、長期間だけでなく短期間での達成度もみていきます。個人も同様に、一年かかる取り組みであったとしても、1ケ月、3ケ月の期間があれば、最初より、大きく学び・成長するものです。

自己PR用の強みやエピソードが見つからないと、自分の過去を深掘りしまくるより、すぐ動き、途中であれば、現在進行形でエピソードを伝える方が健全で、楽しく、あなただけの特別な自己PRにつながるのでお勧めします。

松本利明

まつもととしあき

(KADOKAWA)などはベストセラー。