「ダサイタマ」で埼玉なぜ成長できるか 県民の地元愛が過去最高 飯能など移住進む理由「全然良いじゃん」

SUUMO編集長・池本洋一さん

 誕生から150年を迎える埼玉県。関東平野と秩父山地を擁する県土では、県民が長い時間をかけて文化や産業を培ってきた。そんな埼玉の魅力は何か、未来へのテーマはどこにあるのか。埼玉に育まれるとともに埼玉を育ててきた人たちに語ってもらう。

■「ダサい」住めば違う/SUUMO編集長・池本洋一さん

 私たちの「住みたい街ランキング関東版」では、上野東京ラインなどを追い風にしてさいたま市内の主要駅が上位に入ります。今年のランキングの特徴は、新型コロナウイルス禍で県民が県内のまちに投票する確率「自県投票率」が過去数年で1番高かった点。コロナで都内に行く機会が減り、県内で過ごす時間が増えた。埼玉を「全然良いじゃん」と評価する人が増えた結果だと思います。

 週末に都内へ行っていたが、県内でも楽しめる。空間も広いし駐車場無料の商業施設が多い。実質的な利便性価値を見つめ直し、投票率の向上につながったと思います。

 別の指標で、住んでいる人の評価の表出へと始めたのが「住み続けたい街ランキング」。県内4位の横瀬町は「よこらぼ」を構築しました。町内で社会実験をやりたい人間を募って支援を行ったところ、「自分たちも」という人が出て、うまく循環し始めた。大事なのは自分たちでまちを良くしようと立ち上がるかどうかで、横瀬は良い仕組みを作りました。

 日高市や飯能市では移住促進が進んでいます。コロナ下のリモートワークの普及も追い風に、山間部に近く川が渓流をなす地域には千載一遇の好機。自然と共生することに目が向いてきたからです。

 要点は大資本が動くだけでなく小さな動きとして外で学んだ人が、新しいまちに必要なアイテムを提供し続けること。他者に先駆けてまちづくりに取り組み、ブランド力を高められれば地域のコンテンツ力が上がります。

 一度まちを出た人がプロフェッショナルな能力を身に付けて地元に戻り、魅力を捉え直す事例もあります。熊谷市ではそのような人たちがオーガニックフェスなどに携わる。熊谷の出身者がよそ者視線で、新たな分野で地元を読み解き、まちを楽しくする動きには可能性を感じます。

 埼玉の成長に必要なことは自虐からの脱却とともに「ダサイタマ」のレッテルやイメージを逆手に取り、うまく生かすこと。注目を集めるキーワードのネタの一つとして残し、おしゃれで面白いイベントや、お店ができて、しかもそれはまちに思いを持つ人が作っているという文脈をつくる。最初の印象は「ダサい」だが、過ごしてみたら全然違う印象を与えてやろうと。それを地域住民が中心となり、作り上げることが必要です。

 各自治体にまちづくりのヒーローがいる形になるのが理想。まちづくりなどで素敵な人がいる、その人に憧れて、自分も住まう。持続可能な仕組みが構築され、まちは生き永らえていくと思います。

■池本洋一

 いけもと・よういち 滋賀県生まれ。小学1年時に旧浦和市(現・さいたま市)に移住。県立春日部高―上智大卒、1995年にリクルート(現・リクルートホールディングス)入社。編集、広告営業、事業開発などを経て2011年、SUUMO編集長に就任。19年よりSUUMOリサーチセンタ―長を兼任。さいたま市浦和区在住。49歳。

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