五島・奈留島にキリシタン資料館を 元長崎市職員、柿森さんがCF

資料館を整備する予定の「阿古木隠れキリシタンの里」=五島市奈留町船廻(柿森和年さん提供)

 五島・奈留島の潜伏・かくれキリシタン信仰の歴史文化を後世に伝えようと、元長崎市職員の柿森和年さん(75)が、宿泊もできる資料館の建設費をインターネットのクラウドファンディング(CF)で募っている。
 奈留島には、キリスト教信仰が禁じられていた江戸時代に、長崎・外海地区の「潜伏キリシタン」が海を渡り移住。明治初期の信仰解禁後も教会と距離を置き「かくれキリシタン」となって独自の信仰形態を続けた人も多かった。島西北部の「江上集落」は世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産になっている。

柿森和年さん

 柿森さんは奈留島出身で、潜伏キリシタンの子孫。「長崎の教会群を世界遺産にする会」の事務局長として世界遺産登録運動に尽力した。定年退職後に帰郷し、私費で建てた住居兼資料館「阿古木隠れキリシタンの里」を拠点に、島に残る信仰文化の調査を続けている。
 資金を募っているのは「かくれキリシタン“浜辺の資料館”整備支援プロジェクト」。現在の建物を増築し、絹に書かれたオラショ(祈り)や信仰用具の「マリア観音」など奈留島に伝わる貴重な資料を展示する計画。宿泊設備も併設して、研究・情報発信の拠点にしたい考えだ。資料館に続く道路も整備する。
 資料館の場所は、かつて潜伏キリシタンが集落を営んだ海辺。柿森さんは「信仰を守るために厳しい環境で暮らしたことを資料館で体感してほしい。誰でも寄れる場所にしたい」と話している。
 CFの目標額は500万円。12月16日まで募る。

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