通勤ライナーのこれから ~通勤を支えた列車の行方~

通勤ライナー。日本の大都市圏のビジネスマンたちの通勤を支える列車だ。

鉄道会社の客のニーズに合わせて作られた、便利な列車である。

東京や大阪といった都市圏では、列車が大混雑する。 通勤列車はパンパンで、サラリーマンはみな息を殺し、スーツで勤務に向かう。

とまあ、毎日30分~60分もこんな列車に乗っていては大変だということで作られたのが通勤ライナー。湘南ライナーや中央ライナー。最近では東武東上線のTJライナーや京王線の京王ライナー、京急のウィング号など、様々な路線でこういった列車を作った。

今回は、通勤ライナーの始まりや今、これからの去就など、様々な観点から通勤ライナーを見てみることにする。

各地の通勤ライナーの始まり

かつて、名鉄など、大手私鉄でこれらの運行が始まった。

1965年あたりから豊橋-新名古屋(現・名鉄名古屋)の間で運行が開始され、座席は完全に指定されて、別料金がかかったが定期券を乗車券にそのまま適用しながら乗車できて、また座席指定のため快適な通勤もできるということで、好評であった。特急「北アルプス」の間合い運用として設定されていたため、1990年代に入りながら減少、2001年に完全消滅という形となったが、名鉄特急の歴史のみならず、のちの日本の通勤ライナー界にも大きな影響を及ぼした。

通勤ライナーとしての本格的な歴史が始まったのは国鉄末期からJR黎明期のころである。

1984年7月に「ホームライナー大宮」という名で上野から大宮間で、特急の回送列車を活用したものだ。同年、総武線や阪和線でも運行が開始されて、二年後に運行開始した湘南ライナーやはんわライナーは独自の運転系統を持った。

東京圏、大阪圏のみならず多くでこういった列車が誕生し、それはJRのみならず私鉄にも広まった。こうして、今の通勤ライナーが形成され、また今それが変わろうとしているのである。

今走る様々な通勤ライナーを解説

ここからは筆者が執筆疲れしない程度に、あっさりと全国の通勤ライナーを解説する。爆速で行くので、「この列車、もうちょっと詳しく知りたい!」と思った人はぜひネット辞書界の盟主、wikipediaを見ていただけるとありがたい。

北海道・東日本

JR北海道では、通勤ライナーといわれるものはただ一つ。ずばり、「ホームライナー」である。

JR北海道 ホームライナー

おおぞらに使われる車両がそのまま使われるため、乗車整理券は100円。グリーン車も100円で乗車可能で、非常にお得となっている。手稲―札幌での運行で、乗り得列車として有名。

JR東日本では首都圏地区でのライナー列車は廃止された。その代わり短距離特急(これに関しては次項で解説)が走り、またグリーン車の利用も活発である。

西武では拝島ライナーなどが走るほか、特急ラビューも安価で通勤時間帯にはこういった用途で使われることも。西武―東京メトロ―東急―横浜高速と四社をまたぐSトレイン、東武のTJライナーやTHライナー、京急のウィング号、京成のモーニングライナーやイブニングライナー、小田急のホームウェイなど、京王の京王ライナー…。種類は多彩である。

小田急 モーニングウェイ

新潟地区ではJRがらくらくトレイン村上、長岡、信越などと列車があったが、2021年3月のダイヤ改正で廃止となり乗車整理券式のライナー列車は廃止、全車指定席の「信越」となり、らくらくトレインの中では信越号のみが生き延びている。

長野地区ではおはようライナーなき今、しな鉄のJRのダイヤをそのまま受け継いだしなのサンセット号、しなのサンライズ号が残る。

東海・西日本

静岡地区、中央西線での中津川―名古屋間にてホームライナーが盛んに運行されており、筆者も18きっぷで乗車経験が何度かある。客も多く、好評のようだ。

その他名鉄特急では指定席車両があるものがあり、またこれもライナー性をもったものの一部だといえよう。

西日本では京阪電車のライナー列車以外は存在しないが、東日本と同じく特急化され残されているものもある。

山陽、山陰にも通勤ライナーと称した列車はあるが、これらは実質ただの快速である。強いていうなればマリンライナーなどはそういった性質を持つ列車といえよう。

九州では過去に運転されていたが、今は運行されておらず、自由席特急券などが安いことから特急通勤は他県よりも活発なイメージがある。

通勤ライナーの今後、格上げから見る未来

現状、東京圏、大阪圏といった大都市圏では通勤ライナーが特急格上げといった形になってきている。代表的なものとしては湘南ライナー→特急湘南、中央ライナー→特急はちおうじ等だ。

湘南ライナーに充当されていた185系

特急への格上げで鉄道会社は需要が増えたことを切り落とそうという狙いだろう。これは企業としておかしいことではないだろう。えきねっとのチケットレス割をはじめとしたキャッシュレス促進に向けてのキャンペーンとも紐づけて、非常に頭の良い進め方だとも思う。

しかしながらこれで、客が減るのでは?という見方もある。

特急値上げとなれば当然値段も高くなる。すると当然客も減る。ここまではJR側も想定の範囲内なのだが、遠距離から通勤してきている客からすればこれなら車を使ったほうがいいだろう、という結論に至る可能性もあることは否定できないのではないか。

そうして車需要がもし増えたら、交通状況が傾いてくる可能性もあるし、環境問題といった問題まで関係してくる可能性がある。

今後、通勤列車の格上げは大都市圏での通勤にどういった影響をもたらすのか。ぜひ、今後の動向にも注目したいところである。

湘南ライナーの後継、特急湘南に充当されるE257系

画像:各著作者の許諾を得て使用

【著者】はこはま

神奈川県東部で育ち、横浜に住む。関東地方、北海道地方を中心に色々な地方でマルチな視点から記事を執筆。Twitterフォローもよろしくお願いします!!

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