巨人を捨て「支配下契約」にこだわった山下航汰 原監督もホレ込んだ21歳の才能と素顔

将来を嘱望されている山下(東スポWeb)

まさかのホープ流出だ。巨人は育成選手の山下航汰外野手(21)に対し、来季の契約を結ばないことを19日に正式に通達した。球団側は来季も育成で再契約する方針だったが、本人は支配下でプレーする意思が固く、わずか3年での退団となった。天才的な打撃センスで将来を嘱望されていた〝安打製造機〟。その素顔は、若手ナンバーワンのド根性男だった。

思わぬ退団劇となった。巨人は15日に山下をはじめ今季支配下だった計12選手に自由契約を通知。その全員に来季の育成契約を提示する方針だったが、山下は一軍出場が可能となる支配下でプレーする意思が強く、今後は合同トライアウトの受験も視野に活躍の場を他球団に求めていくという。

山下はルーキーイヤーの2019年にイースタンで打率3割3分2厘をマーク。高卒1年目ではあのイチロー氏以来、実に27年ぶりとなる首位打者に輝いた。非凡な打撃センスは原監督ら首脳陣も早くからホレ込み、一塁レギュラー候補に挙げたこともあった。わずか3年で逸材を失った波紋は小さくないが、チーム関係者からは「確かにもったいない。球団が来季も育成でというところで支配下を望むなら、お互いにやむを得ない結論だったのでは」との声も聞かれた。

もちろん、山下の最大の魅力は打撃だが、それを支えたのはGナインの中でも群を抜く貪欲さだった。昨季までファームで打撃コーチを務め、山下の指導にも当たった村田修一打撃兼内野守備コーチ(40)は以前にこう評していた。

「山下は(19年の宮崎での)フェニックス・リーグで『コン、コン』とバットを持ってきましたね。向上心があって、常に上を見て野球をできる選手だと思いました。何も考えてねえなという選手もいますけど(山下は)考えて野球をやっているんだなと思いましたし。そのへんはすごいですよね」

球場から選手宿舎に引き揚げた後、自らの意思で村田コーチの部屋を訪れ、打撃指導を仰いできたという。そこで「守備のことも考えないと」と伝えると、今度は松本哲也現二軍外野守備走塁コーチ(37)の部屋の扉をノックした。

19年7月に一度は支配下に昇格したが、昨年5月に右有こう骨を骨折し、同年オフに再び育成落ち。巨人では通算12試合の出場に終わった。G党も大きな期待を寄せた有望株を失ったショックは計り知れないが、山下はどんな野球人生を歩むのか――。

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