大正、昭和天皇の御陵にも墓石として使用されている神奈川県真鶴町名産の小松石を使った彫刻作品を街中や海岸などに展示した「石の彫刻祭2021」が30日まで、同町内で開催されている。期間中はスマートフォンを使って町内を謎解きしながら巡るイベントも開催され、「石の町・真鶴」の発信による地域活性化を目指している。
小松石は町内の小松山の周辺でしか採掘できない希少な石材。約40万年前の箱根山噴火によって流されたマグマが冷えて固まった安山岩の一種で、磨くと美しい青黒い光沢が出ることから、古来から源頼朝の墓など最高級品の墓石として利用されてきた。
町では1964年の東京五輪の前年に野外彫刻祭が開催され、世界の彫刻家が真鶴に集まり小松石を彫る作業風景を公開した。今回の彫刻祭はかつての五輪レガシー(遺産)を現代に再現しようと、町や県、地元商業者らによる実行委員会が企画した。
当初、2020年の予定だった東京大会に合わせ、19年に国内外11人の彫刻家が町内に滞在しながら作品を制作。石材を彫る作業を一般に公開し、一部の作品はワークショップ形式で町民らも手伝った。
今夏の五輪開催により、今月1日から彫刻祭を改めて開催。彫刻11点は町内各地に運ばれ、相模湾を望む琴ケ浜海岸には巨石にくぼみを刻んだ「石の時間」(河口龍夫さん作)が置かれた。真鶴半島先端に位置するケープ真鶴(同町真鶴)では高さ3メートルの「ビッグママ」(北川太郎さん作)や、ハート型に町民が石を磨いた「ラブ・ストーン・プロジェクト─マナヅル」(冨長敦也さん作)など4作品が並ぶ。
期間中はスマホを片手に町内を巡る「謎解きさんぽ」も開催。真鶴駅前案内所やまなづる里海BASEで受け付けし、周遊スポットでスマホ専用ページから謎を解いていくと、特製クリアファイルがプレゼントされる。
町は「墓石だけでなく、彫刻作品としても小松石を見直してもらい、真鶴を育てた石の文化を観光客や住民にも肌で身近に感じてほしい」と呼び掛ける。問い合わせは町産業観光課電話0465(68)1131(代表)。