冷凍ズワイガニ高騰、旅館悲鳴「奪い合い」 国内産影響心配、プラン値上げも

 冬のカニシーズンを迎え、手頃な価格で人気の輸入冷凍ズワイガニが昨年の約2倍に高騰している。要因は海外でのカニ需要増で、高値解消の見通しは立っていない。来年2月にも予定されている観光支援事業「GoToトラベル」の再開を前に、旅行プランの価格が引き上げられるなど影響が出ている。

 「カニの奪い合いになっている。昨年2万円だったプランなら5千円程度は値上げせざるを得ない」。京都府北部の丹後地域の旅館経営者は漏らす。

 大阪市中央卸売市場の今年9月の冷凍ズワイガニの平均価格(国内産を含む)は昨年の1.8倍となる1キロ当たり5198円で、過去5年間で最も高い値になり、全体の8割を占めるロシア産の価格は約2倍に上がった。丹後の観光事業者からは「松葉ガニの市場価格も上がるのでは」と心配する声が聞かれる。

 世界的に健康ブームで水産物の人気が高まり、中国などでカニの購買意欲が上がっている。大手水産会社は高騰の理由を米国の旺盛なカニ需要と指摘する。近年、米国人の収入増でカニを買う消費者が増え、販路も量販店や通信販売に拡大。今年は米アラスカ産が想定以上に買われたため、春以降のカナダ、ロシア産が昨年の倍以上に上昇したとみる。同社は「米国市場が好調な限りはこの先もカニの高値、供給難は続くだろう」と説明する。

 高値のため旅行商品の価格も上昇している。JTBは国内産を含むカニのプランを前年比3千~5千円、日本旅行も同2千~7千円引き上げた。

 新型コロナウイルスの緊急事態宣言が解除され、京都府京丹後市の観光公社は「夏場に苦戦した観光需要を挽回したい」と、京阪神の主要駅にカニ漁解禁の広告を出すなど誘客に力を入れるが、「平日の予約が鈍いと聞いている。宿は例年通りの客足があるか不安だろう」と高値の影響を懸念する。

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