「山本由伸対策」は奏功したが…伊勢孝夫氏が心配するヤクルトの “初戦痛敗ダメージ” 

まさかの敗戦に沈むヤクルトベンチ(東スポWeb)

【新IDアナライザー】勝敗の結果はさておき、ヤクルトの〝山本由伸対策〟は間違いなく功を奏したと思う。本来ならば打たせて取るタイプのオリックス・山本に球数を費やさせることを徹底させたのだろう。おそらくミーティングでは「三振しても構わないから、フルカウントまでは粘っていけ」と指示が出されていたに違いない。

6回にヤクルト打線は2つの四球を選んで一死一、二塁と絶好のチャンスを作ると中村がほぼ真ん中への真っすぐを中前へはじき返し、先制点を呼び込んだ。投じた山本から見れば、このシーンはいわゆる「投げミス」。彼ほどの投手なら、1ボールのカウントから2球目で〝どうぞ打ってください〟と言わんばかりの甘いコースをチョイスするはずがない。6回に入ってから球数が100球を超え、打線は3回り目になっていた。事前に指示されていた作戦通り、ヤクルト打線は序盤からジワジワと相手をいたぶる攻撃が実を結び、山本に疲労が見え始めてきたタイミングを逃さず風穴をこじ開けたと言える。

結局、山本は6回を投げ終えて降板。毎回の9奪三振だったが、このヤクルト打線の粘りによって想定以上の112球を投じるハメになった。

一方の奥川は見事な投球だった。前回登板のCSファイナル初戦で巨人相手に好投したイメージのまま、大舞台でも躍動していた。立ち上がりこそやや緊張が見え隠れしたが、オリックス打線の早打ちにも助けられ、気持ちよく投げていた。モヤに一発こそ浴びたとはいえ7回97球、6安打1失点と終始危なげない内容だったと評せる。

ただ、やはり短期決戦は一瞬で流れが変わってしまうことを、あらためて最後の最後で思い知った。2点リードの9回にヤクルトの守護神マクガフが一死も奪えないまま宗に同点の2点適時打、吉田正には中堅の頭を越すサヨナラ打を浴びた。終わってみれば、敗戦濃厚の展開から逆転サヨナラ勝ちで歓喜の輪を作ったのはオリックスだった。この勝利はチーム全体にアドバンテージが付くぐらいの勢いを与えそうだ。

逆に九分九厘で勝ったと思い込んでいたヤクルトにとって、この黒星はダメージが大き過ぎる。何としてでも21日の第2戦で白星を奪い返し、タイスコアに引き戻さないとこのまま一気に突っ走られてしまうかもしれない。(本紙評論家)

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