「たぶん大谷翔平以上は出てこない」 MLBで“満票MVP”を可能にした決定的要因とは

MLBの「救世主」的存在となりそうなエンゼルス・大谷(ロイター=USA TODAY Sports)

エンゼルス・大谷翔平投手(27)が、2001年のマリナーズ・イチロー外野手以来となる日本人2人目のア・リーグMVPに選出された。

投手として23試合(130回1/3)に登板し9勝2敗、防御率3・18、156奪三振。打者として155試合に出場し打率2割5分7厘、46本塁打、100打点、26盗塁、96四球(うち敬遠20)、出塁率3割7分2厘の堂々たる数字、史上初となる投打5部門での「クインタブル100」(イニング、奪三振、安打、得点、打点)達成での受賞となった。

投票した記者全員が1位に大谷を推した今回の受賞。ロサンゼルスタイムズの名物コラムニスト、ディラン・ヘルナンデス記者は「(打撃、走塁、守備、投球を総合的に評価して選手の貢献度を表す指標)WARでもダントツの9・0(投手で4・1、打者で4・9)。なにより現場の選手が選ぶプレーヤーズチョイスで、すでにMVPに選出されているわけだから、この受賞は順当」と大谷の快挙をたたえた。

その上で同記者は「日本ではそうではないかもしれないが、米国では大谷の投手としての評価が高い。打線の援護が絡んでくる勝ち星ではなく、投手としての絶対能力を見ているから。規定未満ながら大谷のWHIP(1イニングあたり何人の走者を出したかの指数)1・09はリーグ4位に相当する数字だし、奪三振率10・77もエリートクラス。これに打者としての圧倒的な貢献度が加わると、比較対象はなくなる」と推された要因を挙げ、舌を巻いた。

そして大谷の歴史的快挙の位置付けについて同記者はこうも語った。

「自分も含めて大谷の今季の快挙が歴史的に見てどれだけすごい事なのかは、まだ誰も理解できていないと思う。ボー・ジャクソン(MLBとNFLでオールスターに出場した唯一の選手)、ディオン・サンダース(MLBワールドシリーズとNFLスーパーボウルの両方に出場した唯一の選手)の例はあるが、大谷のストーリーとは違う。いずれもパワーとスピードだけでなく、技術が必要な同一競技の2つの役割をエリートレベルでこなせる才能は今のところ大谷だけ。もちろん二刀流は今後増えてくると思うが、果たして大谷を超えるレベルが出てくるかという疑問だ。たぶん大谷以上は出てこないと思う」

近年、米国ではアフリカ系アメリカ人の野球離れが深刻でバスケットボール(NBA)、アメリカンフットボール(NFL)の人気に押されMLBの人気は凋落の一途をたどっている。

ヘルナンデス記者も「トップレベルのアスリートはMLBを目指さない」とスポーツ界の現状を語りながら「だから、今年の大谷の活躍に最も感謝しているのはロブ・マンフレットコミッショナーであり球団経営者たち」と大谷が救った具体的対象者を指摘した。

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