オリ劇的サヨナラを生んだ「最大のポイント」 専門家が注目「普通の19歳なら…」

サヨナラ勝ちを決め喜ぶオリックスナインと吉田正尚(中央手前)【写真:共同通信社】

奥川、宮城、佐々木朗に引けを取らない“驚異の高卒2年目”

■オリックス 4ー3 ヤクルト(日本シリーズ・20日・京セラドーム)

「SMBC日本シリーズ2021」第1戦が20日、京セラドーム大阪で行われ、オリックスが4-3でヤクルトに逆転サヨナラ勝ちした。2点ビハインドで迎えた9回、宗佑磨外野手の中前2点適時打で追いつき、吉田正尚外野手の中越え適時打で一気に勝負を決めた。現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が、勝敗を分けたポイントを指摘する。

オリックスは9回、ヤクルトの守護神マクガフを攻め、先頭の紅林弘太郎内野手が右前打、代打・ジョーンズが四球で無死一、二塁に。続く福田は投前へ送りバントし、マクガフが三塁へ送球するもセーフで無死満塁となった。この好機を逃さず、宗と吉田正の連続タイムリーにつながった。

野口氏は「先頭の紅林が粘りに粘って出塁したところが、最大のポイントだったと思います。あれで一気に“イケる”というムードになりました」と見た。高卒2年目で弱冠19歳の紅林は、カウント1-2と追い込まれた後、4球目の外角低めのスプリットをしぶとく見逃し、最後は7球目の外角速球を右前に運んだ。「普通の19歳であれば、4球目のスプリットには手が出ても仕方がない。シーズンを通して中嶋監督が紅林を使い続けてきた甲斐があったと言えるのではないでしょうか」と言う。

痛恨敗戦のヤクルトは第2戦を「願わくは、ワンサイドゲームで…」

紅林は今季、遊撃のレギュラーに抜擢され、打率こそ.228と低かったが、10本塁打、48打点。3番を務めたこともあった。野口氏は「シーズン終盤の10月25日の楽天戦でも、紅林はしぶとさを発揮し、マー君(田中将大投手)からタイムリー2本を放った。守備も、体が大きい(186センチ、94キロ)割に動きがいい。この日本シリーズがさらなる成長のきっかけになるかもしれない」と評する。“驚異の高卒2年目”は、この日先発して7回1失点の快投を演じたヤクルト・奥川、オリックス・宮城、ロッテ・佐々木朗だけではないというわけだ。

一方のヤクルトにとって、守護神が1アウトも取れずに逆転サヨナラ負けを喫した衝撃は大きい。野口氏は「流れを引き戻すには、打線爆発しかない」と指摘。「第2戦の先発が予想される高橋奎二は球数が多いタイプで、完投はなかなか望めない。とすると、リードして終盤を迎えたとしても、第1戦の8回に登板し32球も投げてしまった清水、そしてマクガフを投入できるのかどうか……。願わくは、ワンサイドゲームで勝ち、清水とマクガフにリセットする時間を与えたいところです」と語った。

第1戦から劇的な展開となった日本シリーズ。昨季最下位から這い上がったチーム同士の対決は、今後も何が起こるか予断を許さない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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