金子農相が諫干視察 「基金で解決」堅持 漁業者ら反発

営農者から状況を聞く金子農相(前列左から2人目)=諫早市、中央干拓地

 金子原二郎農相は20日、潮受け堤防の開門問題で混迷が続く諫早湾干拓地を就任後初めて訪れ、営農状況を視察した。開門を求め国と係争中の漁業者や、非開門を支持する営農者らともそれぞれ意見交換。本県知事時代を含めて国営諫早湾干拓事業を推進してきた金子農相は報道陣に「(開門せず、有明海再生に向けた基金で解決を図るとした)2017年の大臣談話が最終的な国の考え方」だとし、非開門堅持の姿勢をあらためて明確にした。開門派は「話し合いが必要。国は解決を阻んでいる」と批判した。
 10年の開門確定判決を巡る請求異議訴訟差し戻し審で福岡高裁は4月、前提条件なしの和解協議を呼び掛けたが、国は「開門の余地を残した席には着けない」として拒否。協議打ち切りが決まり、本年度内に判決が言い渡される見通しだ。
 金子農相は午前、開門を求める長崎、佐賀両県の漁業者ら約30人と佐賀市内で面会。馬奈木昭雄弁護団長は「(漁業者も、干拓地の営農者も、地域住民も)現状のままで一番いいと思っていないことは明らか。皆が良くなる方法は何なのか、解決策はないか話し合おうというのが私たちの提案」だと述べ、訴訟外での対話を求めた。金子農相は「有明海を再生したいという思いは私たちも持っている。(意見を)重く受け止めながら解決方法がないか考えていきたい」と述べるにとどめた。
 午後は諫早市の中央干拓地を視察。営農者の説明を聞いた。その後、非開門を支持する本県の関係者らと市内で意見交換。中村法道知事は一連の訴訟の早期解決、非開門による有明海再生、調整池の水質保全策を要望した。


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