カネミ油症で全国集会 専門家ら救済基金構想実現を カネカの責任も指摘

オンラインの全国集会で油症の苦しみを語る下田順子さん(手前)と恵さん(左隣)=長崎市文教町、長崎大環境科学部

 カネミ油症事件について考える全国集会が20日、オンラインで開催された。元消費者庁事故調査室長の土庫(とくら)澄子氏は被害者救済を目的とした旧厚生省の基金構想の実現、高崎経済大の宇田和子准教授は新たな食品公害基金の創設を提案。原因物質ポリ塩化ビフェニール(PCB)製造企業カネカの社会的責任も指摘した。
 土庫氏は、カネカに責任はないと認めた1987年の最高裁での和解内容は「当時の当事者ではない次世代(油症患者の子や孫)らには及ばない」と指摘。製造物責任(PL)法の立法思想を背景に、PCB製造企業の責任も踏まえ、実現しなかった旧厚生省の基金構想の復活を強調した。
 宇田氏は、汚染油を製造販売したカネミ倉庫による被害者補償制度の不十分さを説明。責任の範囲をカネカなどに広げるとともに直接の加害企業などと、関連する業界の企業などを一体と捉えて費用負担を課す「応責原理」に基づく救済基金の制度化が必要とした。
 集会は全国の被害者団体などが、PCBを製造したカネカ高砂工業所がある兵庫県高砂市で毎年開催。コロナ対策として五島、長崎、東京、兵庫、福岡の5会場をテレビ会議システムで結び、約90人が参加した。
 五島市会場の旭梶山英臣カネミ油症被害者五島市の会会長(71)は「基金の実現には署名集めなどさらに運動が必要になる」との見方を示した。長崎市会場は、長崎大環境科学部の学生らも参加。諫早市の被害者、下田順子さん(60)の長女で次世代被害者の恵さん(32)は「救済の道は一つではなく多面的に考えることが大事だと思った」。同学部4年、槇優太さん(22)は「宇田氏の基金案は関連企業全てで被害者に補償する保険的性格で、企業側にも利があるのでは」と話した。

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