「人々癒やす非日常の空間を」 八面六臂のクリエイター 長崎孔子廟 副館長の小林奈々さん(38)

ヒネモスティバルの準備に励む潘館長(左)と小林さん=長崎市大浦町、長崎孔子廟

 2年連続で中止が決まった長崎ランタンフェスティバル。幸い現在は、新型コロナの感染状況は落ち着き、同フェスの会場の一つ、長崎孔子廟(長崎市大浦町)は、28日に開く新イベント「ヒネモスティバル」の準備で慌ただしい。客足が戻り始めたこの時期に「スタートダッシュが切れる」。イベントの仕掛け人、副館長の小林奈々さん(38)は燃えている。
 ある時は変面ショーの振付師、またある時はコピーライター兼グラフィックデザイナー。企画の立案から広報業務、さらにはイベントのMCまで、自分の中に湧き上がるイメージをそのまま出力して形にしようと駆け回る姿は、八面六臂(ろっぴ)のクリエイターさながら-。
 そんな小林さんは、2018年9月から副館長を務める。中国の総本山並みの様式美を誇る、長崎孔子廟の非日常的な空間を楽しんでもらい、市民から愛される施設を目指す。同館に所属する「変面師」のブランディングを柱に、火木土日曜は「昼なか公演」を打ち、「文化的な夜遊び」と銘打った夜間開園では落語やオペラも上演するなど、目新しい催しを次々に仕掛けてきた。
 「本当は変面師にしようと思って声を掛けた」と打ち明けるのは潘秀貴館長(57)。小林さんが自然と身にまとう“華”に表現者としての才覚を見込んだのだという。自分にはないアイデアを繰り出す小林さんの企画は「100%通してあげたい。新しい発想を止めてしまわないように」と話し、できる限りのサポートを惜しまない。
 国内でも新型コロナの感染者が出始め、不穏な空気が漂う中で開催された20年2月の同フェス。中国から演者を招く公演は中止された。以降、何度も休館を余儀なくされ、来館者数は激減。大打撃を受けた。感染「第5波」が襲った今年の夏ごろは、「計画通りにイベントを開かないと」という使命感にも似た思いで強行。しかし、案の定、来館者数は振るわず、「状況を見て止めるという決断も必要だった」と猛省した。
 再び走りだした夏以降のテーマは「REBORN(再生)」。全ての人が我慢を強いられたコロナ下での2年は、あくまで準備期間。次のイベントのコンセプトを考えた時「癒やしを届けたい」という思いが真っ先に浮かんだ。
 長崎孔子廟で「ひねもす(一日中の意)」過ごしてもらいたい。28日のイベント「ヒネモスティバル」には、そんな思いを込めた。「いつかゲストで来てもらいたい」と考えていた車のCMソング「世界でいちばん頑張ってる君に」を歌う青木慶則さんや、3回目の出演となるお笑い芸人の秋山竜次さん(ロバート)らを招いて開催する。
 昼間は青空と極彩色のコントラストが美しく、日が落ちれば、夜市のような雰囲気を醸し出す同館。もっと市民に足を運んでもらうには-? 「ホイアンランタンを増やして宝石箱みたいにしたい」「パンダを飼育できないだろうか」。実現可能かは別にして、いつだって脳内が忙しい。

 「ヒネモスティバル~誰よりもがんばってる君に~」は28日午後1時~8時。工藤慎太郎、中西弾、ナニコレ?劇団なども出演。全て電子チケットで大人3000円、高校生2000円、小中学生1500円、オンライン参加980円。「チケットペイ」サイトで販売中。

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