学校辞めたら「野球をできるところはない」? 高校中退149キロ右腕が歩むプロへの道

関メディベースボール学院の橋本敏【写真提供:関メディベースボール学院】

橋本敏は高校中退後、関メディベースボール学院に入学した

やり直すチャンスはある。関メディベースボール学院の橋本敏投手は、チーム初となるプロ野球選手を目指している。高校を1年生の途中で中退。野球を続けることを一度は諦めたが、再びプレーするチャンスを得た。投手歴わずか3年で最速は149キロ。プロのスカウトからも注目される存在にまで上り詰めた。

二度とグラブをはめることはないと思っていた。橋本敏は2年前、プロ野球選手になる夢を諦めた。人間関係に悩んで、所属していた高校の野球部を1年足らずで退部。そのまま高校も退学した。「学校を辞めたら野球ができるところはないと思っていました」。高校中退ではプロ野球選手どころか、野球を続ける場所がないと考えていた。

ところが、“ドロップアウト”した選手も受け入れるチームが兵庫県にあると知った。それが関メディベースボール学院。橋本は「もう1回、上を目指して頑張ろうと思いました」と地元の和歌山を離れ、兵庫で一人暮らしする決意を固めた。現在は日曜日以外に練習やトレーニングをしながら、通信制のカリキュラムで高校卒業資格の取得を目指している。

「一度は野球を諦めましたが、ここがあって本当に良かったです。一番の目標はプロ野球の1軍で活躍することです」

橋本は再び、プロ野球選手になる夢を追っている。早ければ、来秋のドラフトで指名の対象となる。4月に行われたオリックス2軍とのオープン戦では4回1失点と好投。練習や試合には既にプロのスカウトが視察に訪れているという。

指導を受けているのはダルビッシュや田中将らを指導した佐藤義則氏

プロも注目する橋本の魅力は最速149キロの直球。ただ、意外にも投手歴は浅い。中学3年生時に指導者の勧めでマウンドに立つようになってから、まだ3年しか経っていない。ポテンシャルの高さに加えて、能力が伸びている要因は恵まれた指導者にある。

総監督は元近鉄の井戸伸年氏で、学院のコーチ陣にはパドレスのダルビッシュ有投手や楽天・田中将大投手からの信頼も厚かった佐藤義則氏らプロ野球でもコーチを務めた人材がそろっている。橋本は自慢の直球との緩急を生み出すカーブのリリースポイントをコーチ陣から教わり、磨きをかけた。

技術の向上だけではなく、野球への向き合い方も大きく変わった。「高校の時は勢いだけでやっていました。上のレベルでやっていくには、考える力をつけないといけないと気付きました」。直球がシュート回転する時には腕の振りを修正するなど、原因を考えながら投球するようになった。井戸総監督も「注目される喜びを感じながら、長所の直球を伸ばしてほしい」と期待を寄せている。

関メディベースボール学院の卒業生には、橋本と同じように高校を中退してチームに加わり、現在は社会人の名門でプレーしている選手がいる。ただ、プロ入りとなればチーム初となる。やり直しはできる。橋本の歩みは、野球を諦めた選手の希望にもなっている。(間淳 / Jun Aida)

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