丸井グループ、「将来世代」の視点で未来志向の経営強化へ 小澤杏子さんらアドバイザーに

小澤杏子さんと渡辺創太さん

丸井グループが未来志向の経営体制の強化に向け、将来世代の視点や価値観を積極的に取り入れる事業展開を進めている。急速に変化する外部環境や多様化する社会に対応するため、経営に多面的な助言や提言を得ることを目的に社外の有識者で構成するアドバイザーに初代ユーグレナのCFO(最高未来責任者)で大学1年生の小澤杏子さんらを加えたり、デジタル・ネイティブ、サステナブル・ネイティブである大学生や大学院生から新規事業のアイデアを募集する。2050年に向けた長期ビジョンの中でステークホルダーの一つに1981年以降生まれの「将来世代」を位置付ける同社ならではの企業価値の創出を狙う。(廣末智子)

小売りやフィンテックなどを手掛ける同社は今年5月に発表した5カ年の中期経営計画で、今後10年の環境変化として、生産年齢の人口が2024年を境に現役世代(1980年生まれまで)から将来世代(1981年以降生まれ)に転換し、「将来世代の常識であるデジタル(DX)とサステナビリティ、ウェルビーイングに対応できない企業は支持を失う」とする見方を表明。これに基づき、「将来世代の未来を共につくる」「一人ひとりのしあわせを共につくる」「共創のプラットフォームをつくる」の3つをインパクトとして計画に織り込んでいる。

ユーグレナ初代CFO・小澤杏子さんら「アドバイザー」に

新たに将来世代のアドバイザーを選任したのもそうした一環で、2019年に17歳でユーグレナの初代CFOに就任し、ユーグレナ社に既存のペットボトル商品の全廃などを提言した小澤さんと、ブロックチェーン技術を利用した次世代Web3.0の構築を主導するステイクテクノロジーズ(Stake Technologies)のCEOで、日本ブロックチェーン協会理事や内閣官房Trusted Web推進協議会のタスクフォースメンバーとしても活動する1995年生まれの渡辺創太さんの2人を起用。

その理由について、小澤さんは「将来世代の視点から、『消費者が意識せずとも環境に配慮した行動を取れる仕組み』を提言している」こと、渡辺さんは「ブロックチェーンに関する経験・知見が深い」ことを挙げる。中期経営計画に基づくインパクトの実現と、DXの推進に向けて有益な助言や提言が得られるだけでなく、「『すべての人がしあわせを感じられるインクルーシブで豊かな社会を共に創る』というミッションやビジョンの実現に向けた推進力となる」としている。同社によると、経営に外部の視点を取り入れる「アドバイザリーボード」は2016年に設置し、現在、6人のアドバイザーがいるが、小澤さんと渡辺さんの2人が、将来世代では初のアドバイザーとなるという。

新規事業の登竜門に デジタル、サステナブル・ネイティブのアイデア募る

また同社は昨年度、グループの新規事業の登竜門として、デジタル・ネイティブ、サステナブル・ネイティブである大学生や大学院生から新規事業のアイデアを募集する「Future Accelerator Gateway」 を創設。選ばれたメンバーと同社の社員がチームを組んで約3カ月間、起業家メンターのもとでアイデアを磨き上げ、新規事業の創出につなげるプロジェクトを実施しており、現在、その第2弾のアイデアを募集中だ。

昨年度は約50件100人の応募があった。絵画作品を誰もが気軽に販売・購入できる「名もなき美術館」と題した展示会のプラットフォームや、高価で使用期間の短い大学の教科書をレンタルできる学生向けの教科書のサブスクリプションサービスが「教育の平等に向けたアプローチであるだけでなく、出版業界のデジタル化の遅れなどの社会課題の解決にもつながる取り組み」として高評価を獲得。4チームの約20人が投資家の前で事業計画をプレゼンした。

「将来世代との共創の取り組み」は中期経営計画の主要KPI(重要業績評価指標)の一つに挙がっており、このような事業を通じて2021年3月期には37件の取り組み件数を24年3月期には100件、26年3月期には150件以上にする数値目標も掲げている。

こうした中、同社は11日に2022年3月期第2四半期の決算説明を発表。この中で青井浩社長は今後の方向性として、「従来の小売り・フィンテックに『未来投資』を加えた三位一体のビジネスモデル」の構築を掲げるとともに、「私たちがしたいこと、できること、稼げること、とステークホルダーが求めることの4つの輪が重なる領域がインパクトであり、今後はインパクトの実現を通じてステークホルダー価値を高め、企業価値の向上を目指していきたい」とする考えを表明。さらに「重要なステークホルダーである将来世代の意見を経営に取り入れ、将来世代との共創を通じて未来に向けた価値創造を加速していきたい」と強調している。

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