デンマークのホテル予約サイト、2030年までに10億回分の旅行をネットゼロに

Nick Karvounis

Bコーポレーション認証を取得したデンマークのホテル予約サイト「グッドウィングス(Goodwings)」は、「10億人のグリーン・トリップ」キャンペーンを実施し、2030年までに自社のサイトから予約された10億回分の旅での宿泊と移動で発生する二酸化炭素の排出量を相殺する目標を掲げる。目標達成に向けて、米会計ソフトフェアのインテュイット(Intuit)や非営利団体のIT活用を支援するテックスープ(TechSoup)、起業家コミュニティ「インパクトハブ(Impact Hub)」など9社・団体と連携し、同社のシステムの利用を促進することなどで取り組みを加速させる。これにより、2030年までに8億トンの二酸化炭素が削減できる見込みだ。

世界の排出量の10%は旅行・観光業界から

旅行・観光業は世界の二酸化炭素(CO2)排出量の約10%を占めている。航空業界の排出量は1980年代半ばから倍増しており、観光業の市場拡大とともに増加している。2050年には、航空業界だけで世界のCO2排出量の25%を占めると予想されている。

パリ協定の目標を達成するためには、世界の平均気温の上昇を止める必要があり、航空業界はその結果を左右する重要な立場にある。また、今後20~25年の間にゼロエミッションの飛行機が主流になることはないと予測されるため、旅行時の排出量を別の方法でオフセットする必要がある。

そうしたなか、「10億人のグリーン・トリップ」キャンペーンは、Bコーポレーション認証を取得したホテル予約サイト「グッドウィングス」が、インテュイット(Intuit)、テックスープ(TechSoup)、インパクトハブ(Impact Hub)や他6つの国際的パートナー企業・団体の協力を得て実施しているもので、旅行によって発生するCO2の排出量を大幅に削減しようとしている。

気候変動対策型のホテル予約サイトとは

2015年に設立されたグッドウィングスは、デンマークやパリ、ベルリン、ロンドンの宿泊施設を対象にしたサブスクリプション型のホテル予約サイトで、旅行で排出されたCO2の総量を計算し、排出量を検証可能な形で相殺するために費用を支払うという、初めての、そして唯一のサイトだ。

こうした独自のビジネスモデルを可能にしているのは、競合他社が年間400億ドル(約3兆5000億円)の広告費をかける中、広告費をほとんどかけず、顧客に代わってCO2を除去するための費用を賄うからだ。同社は主に、インテュイットなどの気候変動に配慮した団体や企業とのパートナーシップを通じて、中小企業や個人の顧客を獲得している。

グッドウィングスは、気候変動対策を講じた旅を手頃な価格で提供している。ホテル予約サイトだが、宿泊だけでなく移動やフライトによるものも含めて旅行における排出量をオフセットできる。また、使用されている排出量の計算システムでは、さまざまな交通手段の選択肢を提示することで、CO2排出量を最小限に抑える方法も表示される。定額料金以外の費用はかからず、個人であれば年間39ドル(約4500円)、法人向けであれば利用者50人で月額49ドル(約5600円)、1000人であれば月額199〜299ドル(2万3000円〜3万4000円)で利用できる。

予測される排出量が算出されると、自然を利用した(ネイチャーベースドな)炭素隔離プロジェクトをグッドウィングスが支援し、排出量を相殺する。同社は、そうしたプロジェクトの中でも、枯渇した草原に植林し森をつくることで、地域の生態系やコミュニティに生態学的および社会経済的な利益をもたらすことに力を入れている。

旅行セクターから、中小企業の脱炭素を後押し

パンデミックが収束に向かう兆しを見せ、旅行と観光が徐々に再開される中、多くの企業は、社会や環境に配慮したやり方で企業活動を再開することを試みている。新しいモデルとしては、地域コミュニティとの協同サービス、環境再生型モデル、脱炭素ツアーや、オーバーツーリズム(観光公害:観光地にキャパシティ以上の観光客が押し寄せ、環境や地域住民の生活に悪影響をもたらしてしまうこと)を軽減するための取り組みなどがあげられる。

インテュイットのグローバル・サステナビリティ・リーダーであるショーン・キンホーン氏は「世界中に繁栄をもたらすという当社の使命は、気候変動への実質的な対応なしには達成できない。社員、顧客、地域コミュニティのために気候変動にプラスになる解決策を提供するという継続的な取り組みの一環として、私たちは世界中の中小企業が自らのCO2排出量を測定し、削減することを支援する」と述べている。「グッドウィングスとのパートナーシップにより、インテュイットは出張による環境への負荷を軽減するための新たな機会を当社の中小企業のお客様に直接提供することができる。世界の雇用の50%を占める中小企業にこうした解決策を提供することは、気候変動対策を推進する上で重要な役割を果たすと考えている」という。

このサービスを利用する中小企業は、自社の社員の旅行や出張時のフットプリントが自動的に計算され、Scope3(「企業による直接排出量」「エネルギー利用に伴う間接排出量」以外の「その他の間接排出量」を指す)測定にかかる時間を数百時間も短縮することができる。また、年に一度、すべての旅行における排出量が確実にオフセットされたことを証明するネット・ゼロ・トラベル証書を受け取ることができる。

グッドウィングスのCEO兼創業者のクリスチャン・メラー・ホルスト氏は、「今回の新たなパートナーシップにより、グッドウィングスと当社のネット・ゼロ・トラベルに向けた解決策は、世界中の数百万もの企業や組織に提供されることになる。これが私たちのビジネス、そして大規模な気候変動対策に大きな影響を与えることを期待している」と語った。

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