有害鳥獣捕獲を山奥から通知 五島市「ほかパト」導入 ICTで負担軽減

「ほかパト」について担当者(右)から説明を聞き、使い方を確認する捕獲隊の住民=五島市玉之浦町、中須生活館

 長崎県五島市は、情報通信技術(ICT)を活用し、携帯電話の電波が通じない山奥からでも、イノシシやシカといった有害鳥獣がわなに掛かったことを知らせる技術を導入した。捕獲者の負担軽減や安全面の向上が期待される。
 市によると、福江島では昨年、シカ約1500頭、イノシシ約500頭を捕獲した。ICTを活用した捕獲情報の通知は、既に一部地区で実施されているが、携帯電話の電波が届く範囲が条件だった。
 今回、通信技術による獣害対策を手掛けるアイエスイー(三重県)が開発した機材「ほかパト」を、シカなどの食害が多い五島市玉之浦町に導入。ほかパトは、携帯電波のエリア外でも通信が可能なサービス「LPWA」(ローパワーワイドエリア)を採用。わなに掛かった動物が暴れると、ワイヤでつなげた子機が反応し、親機を通じて捕獲者に通知される。同町のほぼ全域をカバーできるようになる。
 14日は同町で、捕獲作業に取り組む住民向けの説明会があった。親機は既に設置済みで、子機96台は随時取り付けていく。中須・幾久山地区で、肉用牛とコメを育てながら捕獲に携わる角田隆章さん(66)は「わなを見回る労力が減る。より広範囲に仕掛けることもできる」と話した。
 市玉之浦支所の野澤努さんは「わなに掛かったことが事前に分かるので、複数人で、より安全に捕獲できる」と指摘。出没情報などを市民や観光客にも届けるスマートフォンアプリを開発中で、アイエスイーの高橋完社長は「安全面や捕獲が、より進むシステムを構築したい」と話した。

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