【宮日と考える/宮崎の明日~公立大時事問題講義から】水産業から考えるSDGs 消費が達成の第一歩

 県内ベテラン漁師がよく使う言葉「太平洋銀行」。「預けている」のは現金ではなく魚で、適正量の漁獲を続けていれば、利子が付くように、魚資源は再生産され、水産業は永遠に先細ることはない。まさにSDGs(持続可能な開発目標)だ。
 だが、国内水産業は衰退が続く。養殖を含む日本の2017年の漁獲量は430万トンで、ピークだった1984年から7割減った。乱獲などが影響したとみられ、資源管理の強化が課題となっている。
 一方、ノルウェーではサバ漁などで船ごとに漁獲可能量を割り当てる。収益向上のため、高価格の成魚のみ捕獲するため、早い者勝ちの過当競争が起きず、必然的に乱獲が防がれている。
 本県で持続的な漁業の代表格はカツオ一本釣り漁だ。一匹一匹さおで釣る漁法で、成魚だけを狙うことができ、群れを取り尽くすこともない。今年は日南市・南郷漁協の12隻が、持続可能な漁業の世界的基準を満たしているとして、海洋管理協議会(MSC、本部・英国)の漁業認証を県内で初取得した。
 まだ認知度の低いMSC認証だが、19年にはマクドナルドが「フィレオフィッシュ」に完全認証品の使用を開始。大手スーパーのイオンも取り扱いを拡大させている。海外で「購買は投票と同じ」と言われるほど社会を変える力があるとされる。水産業を糸口とし、持続可能ななりわいで生み出された商品を選択することが、SDGs達成の第一歩になるのではないか。

 奈須貴芳(なす・たかよし)報道部次長。2002年入社。制作部、写真部、報道部、日南支社、経済部次長などを経て2021年から現職。宮崎市出身。44歳。

学生の感想
 【1年、赤嶺小桃さん】SDGsは、今までのやり方を変えていくイメージが強かったが、カツオ一本釣り漁のように、昔ながらの持続的なやり方を再評価することも大切だと気づいた。

 【1年、宇都しずかさん】漁業には後継者不足や乱獲などさまざまな問題があるが、解決策の一つとしてMSC認証品の積極的な購入に取り組みたい。海の豊かさを守るため、まずは何か行動することが大事だ。

 【1年、内村麻里菜さん】持続的な漁業には、「資源や環境を守る」という理念だけでなく、もうかりながら水産資源を永久利用できるようなSDGsの観点が重要。乱獲が行われない仕組みづくりも急務。

 【1年、元すず菜さん】経済発展が続く中国や中東で魚食が普及し、今後日本が買い負ける時代が来る可能性があることに危機感を覚えた。伝統漁法で資源にも優しいカツオ一本釣り漁はもっと見直されるべきだ。

 【1年、阿部遥さん】水産資源がうまく永久利用できるようになったならば、SDGsの観点から、世界中の貧困に苦しむ人々にも届けられるような取り組みも必要になると感じた。

(19日公開の講義から)

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