今回のピノッキオは”憎めないクソガキ” 「ほんとうのピノッキオ」

圧倒的な 情報量と豊富な知識に裏打ちされた考察、流麗な語り口で人気のYouTube映画レビュアーの茶一郎さん。映画スクエアの公式YouTubeチャンネル「映画スクエア Topic」で連載公開中の、茶一郎さんの「超スピード映画紹介」から、最新の紹介動画と書き起こしをお送りします。

茶一郎の超スピード映画紹介 「ほんとうのピノッキオ」

今回ご紹介する作品は、公開中の新作『ほんとうのピノッキオ』です。

「本当の」というタイトルだけあり、『ピノキオ』と聞いてみなさんがご想像されるディズニーアニメとは大違いの、原作に忠実な、残酷なファンタジーに仕上げています。

(以下、ディズニー版は”ピノキオ”、本作は”ピノッキオ”を記載)まず驚くのがピノッキオ。ディズニーのあのかわいかったピノキオとは打って変わって、今回のピノッキオはズバリ「憎めないクソガキ」です。

ディズニー版でピノキオを導くコオロギに、「説教すんな」と逆ギレをして金槌を投げる(※1)。

この悪童ピノッキオが手に負えない事態になる過程を描くこの映画でピノッキオを襲う残酷な問題は、「貧困」「投資詐欺」「人身売買」。星に願いたくても願えない、残酷な現実がピノッキオを襲います。

過去作でも現実と虚構をテーマにしてきた監督マッテオ・ガローネ(※2)は、ロケ撮影と自然光、現実の自然を活かした撮影で、御伽噺でありながら現実そのものを描いています。

またディズニー版が夢の映画なら、こちらは悪夢の映画。ピノッキオが出会う擬人化された動物たちの風邪で熱出したときに見る夢のようなビジュアルも見所。コオロギ人間から、カタツムリ人間、犬人、鳥人、個人的推しはマグロ魚人。キモかわいい造形もお見事です。*4

今回は残酷な悪夢版『ピノキオ』『ほんとうのピノッキオ』ご紹介でした。

※1 原作ではコオロギを殺害。

※2 マッテオ・ガローネの過去作三作品を特に参照。『ゴモラ』イタリアギャング映画という虚構を現実に解体。『リアリティ』リアリティショーという虚構と現実の境界を描く。『五日物語』御伽噺で妊娠、ルッキズム、現実の問題を描いた。

【作品情報】
ほんとうのピノッキオ
2021年11月5日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他にて全国ロードショー
配給:ハピネットファントム・スタジオ
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茶一郎
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