ソフトバンク浮上のカギ握る3本の矢 18歳・井上には王会長が直接指導「評価高い」

王会長(右)の指導を受ける井上(東スポWeb)

8年ぶりのBクラスに転落したソフトバンク。巻き返しの策として積極的な補強も選択肢だが、今オフはFAなどの国内市場には消極的な構えだ。かねて球界内では、DeNA・宮崎敏郎内野手(32)がFA権を行使した際にソフトバンクが獲得に動くという観測も出ていた。

だが、実際のところホークスは静観を決め込み、宮崎はDeNAに残留。数年前から地元・九州の佐賀出身で球界を代表する巧打者の動向をチェックしていたのは紛れもない事実だった。

動かなかったのは年齢面、人的補償の問題もあったが、同じ三塁手に複数の有望株が頭角を現してきたことも大きな理由だ。すぐに思い浮かぶのはリチャード内野手(22)だが、球団内からはもう一人、若鷹の名前が挙がっていた。

「リチャードも楽しみなんだが、実は井上への評価が非常に高いんだ」(フロント関係者)

昨秋ドラフト1位の井上朋也内野手(18)。埼玉・花咲徳栄時代には1年生から「名門の4番」を担い、高校通算50本塁打を放った高卒1年目のルーキーだ。

「完全復活に燃える松田もいて、今年一軍で爪痕を残したリチャードがいて、そこに将来性のある井上が入ってきた。来季2年目でまだ時間はかかるが、井上の存在も少なからず影響している」(チーム関係者)

早くからFA行使に備え、動向を注視していた実力者を見送った裏に18歳の存在もあった。

そんな井上には今秋キャンプで連日、熱視線を送り続ける人物がいた。この秋から新たに「特別チームアドバイザー」の肩書が加わった王貞治球団会長(81)だ。貴重な右の大砲候補ゆえに、将来苦しむであろう打撃の悪癖を直接指摘して、自ら矯正に乗り出したほどだった。真贋を見分ける目は確かな世界の王。その前のめりな「施し」が、井上のポテンシャルの高さを如実に物語っていた。

球団がFA補強に興味を示さず、若手育成にかじを切る決断を下せたのは将来性ある「素材」があってこそ。数年後の答え合わせが楽しみだ。

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