RPGの代表格といっても過言ではない『ドラゴンクエスト』シリーズの初代作。そのラスボスである竜王のあのセリフは勇者への精一杯のマウントだった? 90年代を愛する小川満鈴さんがそこから学ぶこととは……。
幼いころから大人なるになるまで、ずっと私たちの身近にある漫画やアニメ。
キャラクターが発した台詞が心から離れない、という経験をした人は多いのではないでしょうか。
作品の“名言”を振り返る本シリーズ。
今回は1986年5月27日にエニックス(現・スクウェア・エニックス)より発売された歴史的大ヒットゲームの初代作品『ドラゴンクエスト』から心に響いたフレーズをご紹介します。
セーラームーンを筆頭に、90年代コンテンツを愛する小川満鈴さんに影響を与えた言葉とは?
※特性上、作品の内容に触れています。
ドラゴンクエスト25周年記念 ファミコン&スーパーファミコン ドラゴンクエストI・II・III 画像
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初代『ドラクエ』竜王のセリフには裏がある?
もはや説明の必要もないくらいの知名度となったゲーム『ドラゴンクエスト』ですが、1986年(昭和61年)5月27日の発売当時はそれほど有名ではありませんでした。
もちろん、鳥山明さん、堀井雄二さん、すぎやまこういちさんという3人の夢のダッグは話題にはなっていましたが、発売前に今ほど大騒ぎになるほどではなかったのだそうです。そんなドラクエの初代ですが、ラスボスである『竜王』が主人公である勇者に対してこんなセリフを言うのです。
「もし わしの味方になれば 世界の半分を〇〇にやろう」(〇〇は主人公の名前)これ、実は色々な解釈ができるセリフでして、この時点で勇者はドラゴンを倒したり、ローラ姫を助け出したり、ゴーレムを妖精の笛で眠らせたりと、相当な冒険を積んでそして「虹のしずく」を使って竜王の城に乗り込んでこれるくらいの戦力を身につけている。
つまりは、竜王にとって今目の前にいる勇者〇〇は自分の存在を脅かすレベルの相当な猛者なわけですよね。
それを理解していて、「もし わしの味方になれば 世界の半分を〇〇にやろう」と言うということは、実は相当ビビっていて、大きな賭けに出たとも思えるのです。
竜王の心の中「やべえ、勇者めっちゃ強そうじゃん……これ、勝てないかもな……。それなら一回世界をやろうって嘘言ってみるか……。てか、そもそも自分に矛盾があるのバレたらやばいけどな……」って感じでしょうか?
『Dragon Quest I, II & III (1, 2 & 3) Collection』
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竜王の駆け引きと「マウント」を取る人に通じること
ちなみに、この竜王からの選択に「はい」と答えるといわゆるゲームオーバーになり、「いいえ」と答えるとラストバトルに突入となります。
こう考えますと、竜王というのはある意味で「ものすごく駆け引き上手」なのかもしれませんよね。だって、そもそも自分のものではない世界をこれから戦う勇者に「あげるから戦うのやめようぜ」的に言うのですから。
この竜王駆け引きって何かに似ているな? と思ったら、最近よくいる「マウント取りたがる人」だったのです。
今の時代、ネットで情報はいくらでも手に入れることができます。そして、それを自分のスキルや価値だと思い込んで自分はすごい、偉い、頭がいいと勘違いしてしまう。そして初めて会った人なんかに、自分はすごいんです、偉いんです、これだけものを知っているんです的にマウントをとった感じで接する。
でも実は誰でもできることで、別にその人はネットをたくさん見てそれで自分が全てを得たように感じているだけ。結局はその知識はそれを書いた人や作った人がすごいのであってその人がすごいわけでもないことに気がついていない……。このセリフを言った竜王さんもそうですよね。
目の前に自分を倒すかもしれない人間がいるのに、「世界の半分をやろう」なんて、そもそも自分のものではないのに上から目線で言う感じ。これはまさに今のマウント取りたがり人間と似ていると感じたのです。
『小説 ドラゴンクエスト』(スクウェア・エニックス)
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自分で努力することの大切さ
私は人間でもモンスターでも、やっぱり自分で努力して名声や人気、お金を得る人はすごいと思いますし、結局はピンチに強かったり長続きする人だと確信しています。
竜王さんは生まれてすぐに強くて、大して修行も努力もしてこなかったのかは分かりませんが、なんとなくあまり辛い経験をしてきていないボンボン的な方の雰囲気を感じます。
だって、もしそれだけの努力をしてきているのだったら、そんな逃げ道的な提案はしないはずですから……。
と、かなり話が妄想的に飛躍してしまいましたが、人間でもなんでもやはり自分の力で何かを得ることの大事さ。そしてだからこそそれを大事にできるんだと、逆に竜王さんのある意味での姑息な発言から学ばせていただきました。
まあでも、私は場合によっちゃ「はい」かもね……。
(執筆:小川満鈴)
『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』オープニング映像
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<小川満鈴(おがわ・みな)プロフィール>
子役経験を経て、2016年に結婚。
現在は連載コラムなどライター業を中心に活動中。
また、日本一のセーラームーングッズコレクターでもある。
■おがわんセーラームーングッズコレクションサイト(随時更新中):
http://ogawansailormoon.versus.jp/ogwansailormoon/sailormoontop.html