ヤクルトが激勝 前田幸長氏は先発3番手 “格下げ” でも腐らず力投した小川を「さすが」と絶賛 

ベテランの意地を見せたヤクルト・小川(東スポWeb)

【前田幸長・直球勝負】東京ドームに場所を移した日本シリーズ第3戦も、最後までシビれる展開の試合だった。激闘を制し1点差で逃げ切ったヤクルトはもちろん、食らいついたオリックスにも拍手を送りたい。

ちなみに、この第3戦はヤクルト側から見てキーポイントになる試合だと思っていた。先発マウンドを託されたのが〝エース〟の小川だったからである。2点のリードを守り切れず6回に杉本の同点2ランを浴びたのは痛かったが、この回までを97球で投げ切って5安打3失点。クオリティースタートの内容でまとめたと考えれば、高津監督が試合後の勝利インタビューでも述べた通りに「よく試合をつくった」と評していい。

振り返れば今年のレギュラーシーズンでは自身5度目の開幕投手を務め、チームトップタイの9勝をマーク。リーグトップの2試合無四球完投も果たしている。それでも、このポストシーズンでヤクルトの先発ローテは初戦・奥川、2戦目・高橋で固定され、小川は3番手以降に回されていた。第3戦で終了したCSファイナルステージでは4戦目待機となっていたため出番なし。そして、この日の日本シリーズ第3戦先発はシーズン中の10月29日・広島戦に2番手で登板して以来、約3週間ぶりの実戦マウンドだった。

シーズン後半戦から終盤にかけての勢いを頭に入れれば、高津監督が若い奥川と高橋にそれぞれポストシーズンの1、2戦の「負けられない戦い」での先発を任せるのは当然と言えば当然の策だ。

一方で、この日の小川のメンタルとしては普通に考えれば3番手に事実上の〝格下げ〟となったことで、非常に難しいマウンドだったはず。今季は序盤こそ不安定な投球が続いたものの5月以降、復調してチームを引っ張ってきたという自負も内心であったに違いない。だが、キッチリと心を整理し、はやる気持ちを抑えつつ、冷静沈着に大一番へと臨んだのはさすがだ。3回には味方の守備の乱れからピンチを広げて先制点を与えてしまったが、最少失点で乗り切った。ベテランらしく粘り強い投球は大舞台でも健在だった。

この小川の〝仕事人ぶり〟の力投が実を結び、激しいシーソーゲームの末にチームの勝利を手繰り寄せた。個人的には、そう分析している。(本紙評論家)

© 株式会社東京スポーツ新聞社