「走る車の中から一瞬でこれを判断できるのでしょうか」。JR石川町駅そばの交差点にある道路標識に困惑しているという横浜市南区の女性(61)から「追う! マイ・カナガワ」取材班に調査の依頼が届いた。
地元の神奈川県警伊勢佐木署に話を聞こうと、質問書を提出して1カ月が過ぎたころ、ようやく取材が実現した。住民の“怒り”に背中を押され、勇んで署へ向かった。
対応してくれたのは交通課長。書類が挟まれたファイルを手に現れ、「県警本部で了承を得たものしか答えられないですよ」とソファに腰掛けた。取材の録音も許されず、威圧感を覚える。
課長は、問題の標識の『正解』について「月~土曜の午前7時半~8時半、日曜・休日の正午~午後6時は直進のみ可能で、それ以外は直進と左折が可能」と教えてくれた。
そして、「なぜこの一帯に分かりにくい交通標識が多いのか」という質問をきっかけに取材は核心部分に入っていった。
◆一点張りの回答
課長によると、この交差点周辺には商店街と通学路があり、住民からは「通学の時間帯」、商店主からは「買い物客が多い日曜日の午後」に「車を通さないでほしい」というダブルの要望があるという。警察はあくまで要望を受けて規制を掛けているため、標識が複雑になるのだと説明された。
記者「もっと分かりやすい標識を作れないですか」
課長「住民の要望を標識にすると、こうなります」
記者「複雑な標識と、取り締まりで困っている住民もいるようですが」
課長「規制で困るなら自治会などで意見をとりまとめて要望を出してほしい」
記者「この標識は分かりにくいですよね」
課長「警察官も運転中に標識で迷うときはあります。ただ、交通法規に従い安全運転をお願いします」
その後もいろいろ追及したが、「住民からの要望があるから」というキーワードが繰り返されるばかりで行き詰まってしまった。
記者は「交通取り締まりの点数稼ぎの建前」かもと感じたのだが、「規制の通りの入り口だけは重点的に取り締まっているが、中の道路で取り締まっているかは聞いていない」と課長。いぶかる記者は質問を続け、「もしかしたら地域課が交番で何か取り締まりをやっているかもしれない」という回答は引き出したものの、それ以上は“進入禁止”だった。