元阪神マートン氏が明かすシーズン最多安打記録の秘密 背景にあったイチロー氏の存在

阪神などで活躍したマット・マートン氏(写真はロッキーズ在籍時)【写真:Getty Images】

「日本の多くの人の物の見方や考え方を変えた」

2010年に当時のNPB最多安打記録を更新する214安打を放った元阪神のマット・マートン氏。このほどMLB公式サイトのインタビューに応え、自身の記録達成の裏には、当時の記録保持者であったイチロー氏が2004年にMLB最多記録を更新する262安打を放ったことが大きく影響したと明かしている。

2010年に阪神へと加入したマートン氏はシーズン序盤から安打を量産し、シーズン24回の猛打賞を記録。イチロー氏が1994年に放った210安打を上回る214安打を放ち、シーズン最多記録を更新した。

マートン氏は当時のことを思い返し「イチローが米国に来たときに、私が言われたことの1つは、彼は要するにシーズン安打記録を破る『チャンス』を与えられた、ということだった。私たち(メジャー球団)が記録を彼に取らせないようにと勝負を避けなかったという意味でね」と明かす。

かつて日本のプロ野球では、伝説的な選手が残した記録を外国人選手に更新させないように、と勝負を避けるようなことが度々あった。だが、イチロー氏がジョージ・シスラーの持つ257安打のMLB記録を更新した2004年、メジャーの投手たちは異国から来たイチローとの勝負を避けるようなことをしなかった。

「チームが勝つことよりもヒットを打つことのほうが重要なように」

マートン氏は「それが日本の文化圏にいる多くの人たちの目を開いたと聞いたんだ。メジャーの投手が彼に記録を破るチャンスを与えたことが、日本の多くの人の物の見方や考え方を変えたんだと思う」と言う。メジャーの投手がイチロー氏との勝負を避けることなく記録更新に繋がったことで、日本球界の考え方も変化し、マートンの記録も達成できたのだという。

ただ、やはり記録達成の際にはかなりのプレッシャーがかかったよう。「長い間、野球は個人が何をしたかではなく、チームの勝敗にどれだけ貢献したかが大事だと思ってきた」というマートン氏でさえ「あの瞬間は、チームが勝つことよりもヒットを打つことのほうが重要なように感じた」と振り返る。

また、同氏は「頭の中で『あれをして、これをして』というリストを作っていたけど、実際に達成してみるとそれはぼやけていまったんだ。『とにかく示すべきリスペクトを示すことができれば』って感じだった」と、相手チームへ失礼のないように心がけ、2015年に秋山翔吾外野手が216安打で記録を更新した際には祝福のメッセージを送ったことも明かしていた。(Full-Count編集部)

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