【寄稿】総選挙(WEB版)/POKKA吉田 POKKA吉田のネタは今でも手回収

この稿を書いてるのは11月11日から12日にかけてのこと。まだ遊技日本紙面では総選挙の結果について触れてないので発行時期を考えると少し周回遅れの気もするが、それでも触れてみようと思う。

10月19日公示、31日投開票の衆議院議員選挙。衆議院は解散あるいは任期満了ですべての議員が失職するので「総選挙」と呼ぶ。参議院の場合は半分を3年ごとに任期満了するように選挙をするので総選挙とは呼ばない。

衆議院は参議院に対して優越が憲法上認められているため政権選択選挙となる。ざっくり言えば衆議院で過半数を獲った勢力が政権勢力になるということだ。

選挙制度は参議院とはかなり異なっており、選挙区はすべて小選挙区(当選一人のみ)。比例は各地区ごとに割り振られており、小選挙区と並立立候補が可能だ。順位をあらかじめ横並びにして小選挙区での惜敗率で最終順位を決めるというやり方が一般的であり、小選挙区で善戦すれば負けても比例復活できるという仕組みである。なお、参議院の場合は選挙区は都道府県をベースに区分けされており、小選挙区とは限らず中選挙区(複数当選区)もある。また、参議院の比例は非拘束名簿方式であり、順位はつけられておらず候補者名でも所属政党の得票となり、候補者名の数がそのまま順位となる。参議院の比例に族議員が多いのは比例が全国だからだ(衆議院の比例は各地区)。

さて、マスコミの選挙前の下馬評は自民党の大苦戦だった。単独過半数(233議席)をめぐる攻防という予想が最も多く、与党に最も振れた予想でも自公で絶対安定多数(261議席)というのが少しあったくらい。自公で過半数割れの予想はなかったが、野党共闘の影響もあり与党は大幅議席減となるというのが規定路線のように報じられていた。

しかし蓋を開けてみれば結果は与党の圧勝といっていい。自民党は公示前と比べて15議席減となったが単独過半数も危ないと言われていたのに自民党単独で絶対安定多数の261議席を確保した(投開票日時点での所属数)。自民党単独でのこの結果を予想していたマスコミは皆無であり、公明党に至っては3議席増である。野党共闘の中心である立憲民主党は13議席減、共産党は3議席減。わかりやすくいえば自民、立憲、共産が減らした分を維新が増やしたというだけの選挙結果だった。

まさかの甘利自民党幹事長が選挙区で負けるという事態で幹事長を降りたため茂木外相が幹事長に、今回から衆議院に鞍替えした林氏が外相になるという以外は、岸田内閣の概要は変わらず。本格的な政権運営はむしろこれからの岸田政権がどのようにするか、普通に皆が注目しているところである。
ぱちんこ業界的には風営法議連に所属する議員のうち、特に重要な議員のほとんどが選挙区で勝って議席を維持している点が強材料である。業界の抱える諸問題はまだまだ多く解決のためには政治力も要するのは議論を待たない。政権が安定して運営されているときの与党の議員が政治力を発揮できるのは当たり前であり、自公でギリギリ過半数とかの政権下での自民党議員に警察官僚が聞く耳を持つとは限らないわけだ。そこに民意があるから政権運営の安定度が決まりその民意を背景にした政治家だから警察官僚にモノを言ったときの重みが違うわけである。

岸田総裁となったときに二階氏は幹事長でなくなっており、業界内には二階氏の権勢の衰えを不安視する人も多かったようだが、風営法議連的には二階派と同じくらい重要な麻生派がむしろ政権運営に与える影響が増えており、その点はあまり心配していない。特に今のところ岸田政権は「党高政低」と呼ばれている。内閣よりも自民党ということであれば、現役の議員の重要な人たちがほとんど生き残った今回の結果は十分だろう。また、安倍・麻生両元首相の影響力云々などと評価されているが、実際のところ甘利氏の後任に茂木氏、茂木氏の後任に林氏という流れは安倍氏よりも麻生氏に利するような印象も私は持っているため、麻生氏の影響力は安倍氏のそれよりも上になっていると見ている。今も風営法議連は麻生派の田中氏が会長である。

業界と政治との関係性でいえば、総選挙の次は来年の参議院選挙ということになる。こちらは自民党の執行部が岸田総裁誕生で刷新される前に全国比例で推す候補者が決まっているが、新しい執行部・内閣が本格的に稼働する今後、どのように対峙していくかは、21世紀会、特に全日遊連などの主要団体の今後の考えによるところが大きいと思う。業界内にそういった考えが発信されるようになるまでは今のところは触れるべきでもないかとも思う。話が出てきたときにまた本紙でも触れるかもしれない。
今回の結果、政治力の活用は従来通りの環境は維持できている。もちろんそもそも最重要なことは業界側と警察庁との協議の行方であるから、「いつも通りの継続的な努力」を諸問題の解決のためにやっていくことが大切ということになる。選挙結果は業界にとってはありがたいことにそれをやっていくことができるよ、という評価だろうか。マスコミの多くが予想した結果だった場合は与党の影響力が低下していたことだろうから、それよりは全然良いということである。

むしろ岸田政権に業界視点で期待したいことは、コロナ対策の次の段階である。安倍政権、菅政権下でのコロナ対策は政府が営業を控えるように要請する業種をあらかじめ策定し、そのガイドラインに基づいて各自治体が決めていた。このガイドラインに根拠もなくぱちんこ営業が盛り込まれ続けていたことで、一年半ほど悶着が続いていたわけだ。昨年の春は経過措置と公的融資のために休業を業界全体としては肯定し、それ以降はクラスター無発生とガイドラインの無根拠を理由に、時短要請等を事実上無視するということを業界全体としては選択したわけである。日本がどのようなワクチンパスポート化を選択していくか、やはり方針を示すのは岸田政権であり、コロナ禍で大打撃を受けている各産業をどうやって回復させていくか、という経済政策も注目しておきたい。日本全体が経済的に元気にならないとぱちんこ業界も良くならないのは間違いないと思うからだ。

いまはまだ公明党と18歳で線引きした支給をめぐる自公合意が政治のトップニュースである。特別国会のあと、12月に開く予定の臨時国会にて補正予算審議に入る予定だ。この補正予算案には台湾のTSMC(世界最大手)がソニーと組んで熊本は菊陽に新工場を建設する補助金(4,000億円規模)が含まれる見込みである。こういった岸田政権の「初仕事」の内容が、日本経済の回復やぱちんこ業界の動向をプラスに動かすような内容になっているか、そういうところに私は注目している。そもそも、いくら政治力とはいえ、総理や大臣がぱちんこ業界を直接触るということは今までもあまりなかったわけだ。自動車産業や農業などとは違うのだから、議連の議員らを中心に、今後も政治力は活用しつつ、我々ぱちんこ業界関係者は岸田政権によって日本経済が良くなっていくかどうかを注目するのが自然の流れだと思っている。

総選挙はそのような結果に終わったというのが私の寸評だ。

■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。

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