COP26「グラスゴー気候合意」で高まる日本への圧力、各国の削減目標と比較

英国グラスゴーで10月31日から開催された第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)は、11月13日に「グラスゴー気候合意」を採択して閉幕しました。

地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」で合意された、産業革命前からの気温上昇を2.0℃に抑える目標から前進し、1.5℃を重視して排出減に向けた取り組みを進めることで一致しました。

主要議題の一つである温室効果ガス削減目標と実行計画について、直近では豪州やロシア、サウジアラビア等が新たな目標を表明しています。


2022年末までに削減目標を再検討

もっとも、「パリ協定」は、現状の各国の排出削減目標では達成できないため、必要に応じて2022年末までに2030年の削減目標を再検討する方針も打ち出されました。気候変動枠組み条約事務局は、現状の取り組みのままでは温室効果ガスが13.7%増えると試算しています。

日米欧は2050年のカーボンニュートラルを長期目標としていますが、中国やロシアは2060年を目標年にしており、前倒しを求める声も出ています。また、このままでは水没してしまう懸念が強いモルディブなど島しょ国は、早急な気候変動対策を要請しています。

世界で必要なクリーンエネルギー投資資金

2つ目の主要議題は、経済発展によって、今後もしばらく排出量が増える途上国に対する、先進国による資金支援です。先進国による2020年までの年1,000億㌦の目標は未達のままです。今後の速やかな達成を求め、大幅に増やす必要性に言及されました。

2050年のネットゼロ達成には発展途上国支援のスキームが非常に重要となる。IEAによると、2050年までに世界のエネルギー部門がネットゼロを達成する為には、クリーンな電力や消費サイドの効率改善、低排出燃料等へのクリーンエネルギー投資を現在(2016~2020 年)の不十分な水準(年間9,700 億㌦)から2026~2030 年に約4 倍(年間3 兆9,420 億㌦)に増やす必要があるとしています。

現時点の目標は達成されるものの産業革命前から1.5℃を超えてしまうシナリオでも、約1.7倍増やす必要があります。資金調達コストが高い途上国への投資額が大きいため、公的金融期間を呼び水とし、低コストな民間資金の調達方法を強化する必要があるでしょう。

「石炭火力を段階的に削減」で合意

COP26 の最大の焦点だった石炭火力発電の利用については、当初の文書案の「段階的な廃止」から「段階的な削減」へと表現が弱められました。議長国の英国は、石炭火力の段階的な「廃止」にこだわりましたが、インドなどが最終日に反対しました。

日本では電力の約3割を石炭火力に頼っています。10月22日発表の「エネルギー基本計画」によれば、今後、古くて効率の悪い発電所を減らしていくものの、2030年度も全廃せず、電力の2割弱を石炭火力で賄う計画です。

2022年はドイツで先進7ヵ国首脳会議(G7サミット)の開催を控えており、将来の廃止の方向性が提起される可能性は高いでしょう。G7の一員である日本に対しては、途上国のインド等に比べると、石炭火力廃止に対する圧力は強くなると考えられます。

日本でも、更なる再エネ増へ

日本の最新版「エネルギー基本計画」は気候変動対策を最大の目的としています。再生可能エネルギーを2030年度に36~38%(前回2015年計画の22~24%)と大幅に引き上げる一方、火力発電は41%(同56%)へ引き下げていく計画です。

再エネの中でも、太陽光(旧目標の7.0%→新目標の14~16%)、風力(同1.7%→5%)、水力(同8.8~9.2%→11%)は引き上げられた一方、地熱(新目標で1%)とバイオマス(同5%)はほぼ据え置かれました。また、新たに温暖化ガスを排出しないアンモニアと水素を燃料とする発電で1%を賄う計画です。

COP26 では環境省がジャパン・パビリオンを設置し、東京大学や日本自動車工業会等が連日セミナーを開催。パナソニックが水素燃料電池、三菱重工業が二酸化炭素の回収技術等を紹介しました。今後、世界が脱炭素へ向かう中、再エネ増を担う新しい技術を有する企業や環境投資資金の動きから目を離せないでしょう。

<文:チーフESGストラテジスト 山田雪乃>

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