明治~戦後の貴重な古切手 貼り絵制作への寄贈に「感謝」 諫早東特支中学部

台帳ごと贈られた切手の歴史背景を聞く大口さん(左)と木村さん=諫早東特別支援学校

 長崎県諫早市の県立諫早東特別支援学校(林田一彦校長)が、生徒たちの貼り絵制作のため使用済み切手の提供を市民に呼び掛けたところ、未使用品を含む明治から戦後にかけての約500枚が台帳ごと贈られた。提供主は不明で、学校側は「思い出が詰まった切手を子どもたちのために寄贈してもらい、ありがたい」と感謝している。
 貼り絵は学習発表会で披露しようと、村田勝彰教諭(49)が9月、中学部2年生らに提案。1年生も加わり、計8人が約1カ月半かけて完成させた。2枚をつなぎ合わせた模造紙に3千枚近くを使い、諫早のインスタ映えスポット「フルーツバス停」や、コロナ禍収束の願いを込めて妖怪「アマビエ」のデザインがあしらわれている。
 作品に使う使用済み切手は近くのスーパーなど2店舗に箱を置かせてもらい、買い物客らに提供を呼び掛けた。学校側が回収に行った際、店側から「(箱に入らず)預かっているものがある」と手渡されたのが台帳やファイル計4冊に整理された約500枚の切手だった。
 村田教諭がカタログで生徒たちと調べたところ、航空郵便用に発行された昭和初期の「航空切手」や「富士鹿切手」、戦前の「国立公園切手」、関東大震災で設備が失われる中、応急的に発行されたため目打ちがない「震災切手」、明治時代の菊切手など国内外の古切手であることが分かった。一部は未使用の状態だった。
 学校側は「貴重な切手」と判断。今回の貼り絵には使用しなかったが、「切手にはその時代の出来事が反映されている。生徒たちに歴史を伝える機会になった」(村田教諭)。指導に当たった丸内一哉主幹教諭(58)は「コレクションしていた方の子どもか孫に当たる人ではないか。呼び掛けに応えていただき、うれしい。子どもたちのことを思ってお渡しくださったので、今後、何かに役立てたい」としている。
 貼り絵は10月末にあった学習発表会で披露した後も校内に展示。多くの善意で作品が完成したことに、2年生、木村優太さん(13)と下絵も描いた1年生、大口紗瑛さん(13)は「どの色の切手を使えばいいのか難しかったが、いい作品ができてうれしい」「たくさんの人の思い出が詰まった作品ができた」と笑顔で話した。

生徒たちが使用済み切手で制作した貼り絵=諫早東特別支援学校

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