伝統話芸を故郷で披露 みなべ出身の落語家、春風亭橋蔵さん

江戸落語を披露する春風亭橋蔵さん(和歌山県みなべ町で)

 和歌山県みなべ町芝出身の江戸落語家、春風亭橋蔵さん(33)=本名・宮崎慶太さん、千葉県船橋市=が、故郷で高座を続けている。26日には白浜町内で落語会に出演する。「落語は伝統話芸の一つ。もっと多くの人に興味を持ってもらいたい」と呼び掛ける。

 橋蔵さんは田辺高校を卒業し、東京経済大学に進学。2年生の頃、授業で落語に触れたことで興味を持ち、当時は休部状態だった落語研究会を4人で復活させた。大学卒業後は都内の百貨店に就職したが、落語の面白さを忘れられず、3年ほどたって同じ大学のOBでもある8代目春風亭柳橋(落語芸術協会副会長)の門をたたいた。2014年春のことで、2番弟子となり前座として「かん橋」の芸名をもらい、修業生活が始まった。

 4年たった18年春に二ツ目に昇進した。その際に改名した現在の芸名は、自身が先輩たちに相談して決めた。芸名は歌舞伎俳優にあやかることが多く、時代劇俳優としても知られる「大川橋蔵」から取ったが、「橋」は師匠の一字、「蔵」は縁起のよい字だったのが決め手になったという。

 二ツ目になれば前座とは違って、独り立ちして活動する。主には都内にある新宿、浅草、池袋、上野の寄席を回るほか、自身で開拓して高座に上がる。「落語家は個人商売。自分で仕事を取ってこなければならない」と、地方での興行も視野に入れているが、新型コロナウイルスの影響もあり、活動には苦戦している。

 そんな中、田辺市内で今年1月にあった落語会に出演したのに続き、今月21日から地元住民の協力でみなべ町内や田辺市内で高座を開いている。東京に戻るためひとまずは24日で終えるが、26日には、現代アートの祭典「紀南アートウイーク」の一環として、白浜町のJR白浜駅前にある真珠ビルで午後6時半から開かれる「夜市と落語の夕べ」に出演する。

 橋蔵さんは落語について「もともとは説法で始まった。上方落語は主に通りで演じられ、にぎやかで派手な演出が多い。一方、江戸落語は寺で金を取ってやるなど、雰囲気は違う。始めたころ、上方も聴いたことはあったが、興味を持ったのは江戸の方だった」と話す。

 持ちねたの演目は「初天神」と「鹿政談」などすべて古典落語で、その場の雰囲気で演目を選ぶという。「まだまだ少ない。今後、増やしていきたい」と語る。

 各地で興行を増やすのも目標だ。「入門して10年目に真打になれるよう、日々精進したい」と力を込める。

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