朝鮮半島情勢、「中露の協調が米への対抗力に」 朝鮮統一支持全国集会の発言から

朝鮮統一支持運動第39回全国集会in千葉(21日、千葉市民会館、主催=朝鮮の自主的平和統一支持日本委員会、千葉実行委員会)では、朝鮮大学校朝鮮問題研究センターの李柄輝教授と国際政治学者の浅井基文氏(元外務省地域政策課長)が講演、討論し、膠着状態が長期化する朝鮮半島情勢を朝鮮の政策や各国の動向などに基づいて分析、展望した。浅井氏の発言を紹介する。

講演する浅井氏(左)と李柄輝教授(C)朝鮮新報

中ロの政策一致

浅井氏は講演と討論で、最近の朝鮮半島情勢を米中ロなどの周辺国の外交政策、北南の内外政策を踏まえて分析したうえで、日本の課題を示した。

まず、激化する米中対立と米国の対朝鮮半島政策の相互関係について、「バイデン政権は対中政策の延長として朝鮮半島情勢を位置付けている。米国の対中政策は常軌を逸していて長続きするものではないと考える。対中敵視政策が限界に達するのが先か、支持率が低下するバイデン政権自体の崩壊が先か。その段階になって米国内で朝鮮半島問題が浮上するのではないか」と持論を述べた。

また朝鮮半島問題をめぐる米南間の交渉については来年3月の大統領選挙を踏まえて、「文在寅政権はなんとしても後継者に望みをつなげたいとしているが、米国とは見解の相違があり、脈はないと見ている。文在寅政権の先は短く、大統領選挙の結果によって韓国の対外政策が大きく変わるので、バイデン政権としては様子見を続けるだろう」と分析した。

不透明な米南の動向と相反して、注目すべきとして浅井氏が指摘したのが、朝鮮半島問題における中ロの協力だ。

「中ロの朝鮮半島政策は一貫しており、朝鮮半島情勢を打開する必要があるという点で完全に一致している。そしてもう一つは、金正恩政権に対する肯定的評価だ。習近平主席もプーチン大統領も“やるじゃないか!”と、非常に驚きながら金正恩政権の対外政策を見ているはずだ。また、中ロは安保理の対朝鮮制裁決議の撤廃にも本気度を示している。朝鮮半島情勢においては米国の動きが極めて大きいが、今後は中ロの協調を米国に対するカウンター力として注視する必要がある。中ロは朝鮮半島情勢の安定、朝鮮半島の非核化に向けて、米国の理不尽な政策に対抗している。これは数年前にはなかった要素として注目する必要がある」

日本の人権意識を喝破

日本の対朝鮮、対南朝鮮政策については、「人権意識に基づいて日本が立場を変えるべきだ」と苦言を呈した。

安倍―菅政権の外交安保戦略を踏襲する岸田政権は、日本軍性奴隷制問題解決の鍵は南朝鮮が握っているとし、性奴隷制をめぐる2015年の南・日「合意」の履行を主張している。

これに対して浅井氏は、「合意は、日韓関係の悪化が自らに害を及ぼすと危惧した米国による圧力を朴槿恵政権が飲んだという背景がある。そこには被害者の人権、尊厳への考慮は一切ない。こんな馬鹿げた合意はない。文在寅政権が被害者の尊厳を尊重し、合意を破棄したのは非常にもっともなこと。戦後国際社会の発展における最大の成果は国際人権法の発達であり、これに逆らっているのが日韓合意だ。日本の立論は根底で間違えており、合意は間違いだったと日本が立場を変えなければならない」ときっぱり。

さらに在日朝鮮人に対する差別問題と関連付けながら、「正しい人権意識に基づけば、日韓合意は正しいと言いながら在日朝鮮人の権利侵害はだめだという議論は出てこない。そのようないいかげんな人権感覚ならないも同然だ。われわれは物事を判断するときに、何よりまず人権を出発点としなければならない。そういう観点に立てば在日朝鮮人に対する人権侵害は到底許すことのできない国際的に恥ずかしいことだという認識が国民的に出てくる。その認識が常識になれば、日韓関係も自分たちがまず改めなければならないという世論が出てきて、それが自民党を追い詰めていくはずだ」と論じた。

また、官邸支配の日本政治については、官邸主導の人事権と小選挙区制の廃止を訴えた。浅井氏は「私が外務省にいた当時は少なくとも忖度という言葉は知らなかった。今は忖度しかない。官僚の人事権を各省庁に戻すべきだ。また、小選挙区制によって党の幹事長からお墨付きをもらえないと立候補できなくなった。中選挙区制に戻すべきだ」と喝破した。

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