日経平均は年内にも3万円を回復すると断言する理由を解説

今年も残すところ1ヶ月と少しになりました。日経平均は11月24日終値時点で2万9千円台ですが、筆者は年内にも3万円を回復するとみています。その理由を解説します。


日経平均の今期予想EPSが急落した要因

上場企業の4~9月期の決算発表が一巡しました。決算発表前半は上方修正する企業が相次ぎ、それを反映して日経平均の今期予想EPSはじわりと増加していきました。日本経済新聞が「企業の今期増益率45%、再び上振れ」と報じたのは11月7日のことです。その時点の日経平均の予想EPSは大きく上振れて2,180円弱に達しました(【図表1】の(1))。

ところが一夜にしてEPSは2,026円まで急低下しました(【図表1】の(2))。その理由はソフトバンクグループ(以下、SBG)の業績予想が下方修正されたからです。SBGが8日に発表した決算で2021年7~9月期の最終損益が3,979億円の赤字となりました。これを受けて通期の純利益予想は一気に2兆5,000億円も下方修正されたのです。

日経平均のPERとEPSはどう決まる?

ここで日経平均のPER(株価収益率)やEPSの求め方を解説します。日経平均はただの指数ですから1株当たり利益(EPS)というようなものはありません。EPSは純利益を発行済み株式数で割ったものですから、日経平均を構成する225銘柄のEPSを単純に平均しても日経平均のEPSにはなりません。

ではどうするかというと、日経平均を、傘下に225社の子会社を持つ持ち株会社のように考えて「日経平均株式会社」の利益合計を集計します。その合計利益で225社の時価総額合計を割れば「日経平均株式会社」のPERが求まります。そのPERで日経平均株価を割れば「日経平均株式会社」のEPSが求まるという次第です。

図表2の「11/5予想税引利益」列を見ると、日水(1332)からSBG(9984)までの利益合計は約34兆円です。これで時価総額合計の464兆円を割ればPERは13.6倍と求められます。 「11/10予想税引利益」列を見ると、利益が一気に2兆円も減少したことがわかります。時価総額合計は459兆円に下がりましたがPERは逆に14.4倍に上昇しました。その結果、EPSが大幅に下がることになったのです。

日経平均を構成する225社の純利益合計が34兆円でうちSBGが4兆5,000億円と13%強ものウエイトを占めていたのです。その利益が半分吹き飛んだわけですから「日経平均株式会社」のEPSを7%も減らすことになりました。これがEPS 2,180円⇒2,026円(▲7%)の背景です。

その後、日経平均のEPSは再び増加傾向にあり、先週末時点で2,090円弱まで戻っています(【図表1】の(3))。銀行や損保の上方修正が寄与したと思われます。これを受けて日経平均株価も上値が重いながらも持ち直しています。チャートの通り、10月初旬につけたボトムから右肩上がりと見て取れるでしょう。

現在の日本株は“割安”水準

日本経済新聞社の集計によれば今年度上期の上場企業の純利益の合計額は前年同期の2倍となり、同期間で過去最高を更新しました。通期では48%増となる見通しです。

一方、TOPIXの今期予想EPSはいまだに36%増益のままで、直近の決算発表における企業側見通しの上方修正を反映していません。従って今後はこの好業績を追いかける格好で徐々に織り込みが進み、株式相場は堅調に推移するでしょう。

日経平均を構成するのはわずか225銘柄ですから、上場企業全体の数値とは完全には一致しません。それでも日経平均構成銘柄は時価総額で市場全体の8割をカバーします。従って日経平均のEPSも今年度通期では5割弱の増益になると仮定すれば2,300円強となる計算です。

上述の通り、今は2,090円程度ですから、ここから約10%上方修正余地があります。その予想EPSをPER14倍で評価すると、日経平均株価は3万2,000円を超えます。予想業績から見て今の日本株の水準は明らかに割安です。

コロナ感染は海外では再拡大していますが日本は抑制されています。グローバルなリスク回避の観点からも日本株への資金シフトが起きてもおかしくありません。原油等エネルギー価格は一服となっており、コスト増が懸念されていた日本企業の業績面での追い風です。

大型の経済対策も決定され、これから年末にかけて日経平均はいよいよ3万円台回復が視野に入ってきます。無論、3万円は通過点に過ぎず、上値はさらにあると考えています。

<文:チーフ・ストラテジスト 広木隆>

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