マゼラン雲が生み出したマゼラニックストリーム 5000万年後に天の川と合流か?

【▲夜空に浮かび上がるマゼラニックストリーム。この画像は、数値シミュレーションから直接得られたもので、美観のために修正が加えられています(Credit: COLIN LEGG / SCOTT LUCCHINI)】

わたしたちの銀河系(天の川銀河)は独りぼっちで存在しているわけではありません。その周囲には、矮小銀河と呼ばれる小さな伴銀河が取り巻いています。その最大のものは南半球の夜空に輝く大小マゼラン雲です。

大小マゼラン雲が何十億年もかけて銀河系の周りを回っているいる間に、重力の相互作用によって、それぞれの雲から巨大な弧状の中性水素ガスが引き出されました。これが「マゼラニックストリーム」(Magellanic Stream)です。

マゼラニックストリームは、天の川銀河とその周辺の銀河がどのようにして誕生したのか、その未来がどのようになるのかを教えてくれます。

米国ウィスコンシン大学マディソン校と宇宙望遠鏡科学研究所の研究者が開発した新しいシミュレーションモデルによると、マゼラニックストリームがこれまで考えられていた距離の5分の1程度という、より地球に近い場所にある可能性を発見しました。

今回の発見は、このストリームが予想よりもはるかに早く銀河系に衝突し、銀河系での新たな星の形成を促進する可能性を示唆しています。

「マゼラニックストリームの起源は、過去50年間、大きな謎でした。わたしたちは、モデルを使って新しい解決策を提案しました」と語るのは、ウィスコンシン大学マディソン校の物理学を専攻する大学院生で、論文の筆頭著者であるScott Lucchini氏。「驚いたのは、このモデルによってストリームが天の川に大きく近づいたことです」

今回の再現では、矮小銀河が銀河系に取り込まれる際に、小マゼラン雲が大マゼラン雲の周りを従来とは逆方向に周回していたことがわかりました。軌道上の矮小銀河が互いにガスを奪い合うことでマゼラニックストリームが生成されたのです。

この逆方向の軌道は、ストリームを押したり引いたりして、銀河間空間にまで伸びるのではなく、地球方向に向かって弧を描いています。ストリームが地球に最も接近する距離は、地球からわずか20キロパーセク、つまり約65,000光年であると考えられています。マゼラン雲自体は55~60キロパーセク離れたところにあります。

マゼラニックストリームが接近しているということは、このガスが約5000万年後に天の川と合流を始めることを意味しており、銀河系内に新しい星が誕生するきっかけとなる新鮮な物質を提供することになります。

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Image Credit: COLIN LEGG / SCOTT LUCCHINI
Source: University of Wisconsin-Madison / 論文
文/吉田哲郎

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