オリ劇勝!「山本由伸を強行先発させない」最後までブレない中嶋采配の真骨頂

インタビューで「第6戦は山本由伸」と予告先発した中嶋監督(東スポWeb)

パ・リーグの王者が意地を見せた。日本シリーズ第5戦が25日に東京ドームで行われ、3連敗で追い込まれていたオリックスが6―5でシーソーゲームを制し、対戦成績を2勝3敗とした。この試合、舞台裏では〝無双エース〟の中4日投入もささやかれていたが、結果的には温存に成功した格好。第6戦は舞台を神戸へ移し、27日に行われる。

勝因はやはり中嶋聡監督(52)のブレない起用法だった。オリックスが球史に残る激戦を制し、日本一への望みをつないだ。

負ければシリーズ敗退という崖っぷちで臨んだ第5戦。序盤から目まぐるしく試合展開が動くシーソーゲームだったが、最後は同点で迎えた9回に代打・ジョーンズが左翼席中段に決勝弾を放ち勝ち越し。劇的な勝利でヤクルトを振り切った。

「(勝てて)良かったです…。(選手にどんな言葉をかけて送り出した?)いや、何も言ってません」

試合後の勝利監督インタビューでいつも通りの武骨な表情で喜びをかみしめた指揮官。だが、このブレない姿勢こそがこの日の激勝を呼び込んだとも言える。象徴的だったのがエース・山本由伸を第5戦に強行先発させなかったことだろう。

シリーズが1勝3敗となった第4戦の試合後。周囲からは「次戦で負ければシリーズ敗退。第5戦は中4日で山本を登板させるのでは」という臆測の声が飛んだ。実際、第4戦の試合後に報道陣から翌日の先発投手について聞かれた中嶋監督は「ヤマ」とだけ言い残し周囲をけむに巻いた。それでもふたを開ければ第5戦の先発は大方の予想通り左腕の山崎福。絶体絶命の窮地に陥っても指揮官の心は揺れ動かなかった。

この背景を中嶋監督を知る球団関係者はこう分析する。

「メディアや一部ネットなどでは由伸の中4日登板を望む声がありましたが、おそらく監督はどんな状況になっても最初から由伸を第5戦に登板させる意思はなかったと思います。中嶋監督はああ見えて本当に選手の体調に気を遣う人。選手に負担を強いる起用法は絶対にしない。右手首骨折の吉田正がCSファイナルからの復帰を直訴した際にも最後まで先発起用を悩んでいたのが監督自身なのです。シーズン中からこうした起用法を貫いてきたからこそ、選手も起用された際には意気に感じて結果を残そうと必死になる。この好循環を生む采配こそが今年のチームの強さなのです」

この日スタメン抜てきした20歳の太田が7回に一時勝ち越しとなる適時三塁打。第4戦まで3打数無安打3三振(1四球)と散々だった助っ人・ジョーンズを迷いなく同点の9回に送り出した起用法もすべてシーズン通り。指揮官がこの戦い方を貫く限りチームは崩れない。

まだ2勝3敗と劣勢に変わりはないものの、第6戦の舞台は準本拠地の神戸。先発マウンドには第5戦で温存したエース・山本を万全の状態で送り込める。

「追い込まれている状況は変わりませんけど、最後まで本当にあきらめないで頑張りますので。山本由伸で…タイに持っていきたいと思います」とは指揮官。まだまだ日本一の行方はわからない。

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